原子力産業新聞

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WNA「世界原子力投資ガイド」全5モジュールを公開
資金調達の壁は技術より「価値評価」

13 Oct 2026

鈴木 杏奈

©World Nuclear Association

世界原子力協会(WNA)はこのほど、金融機関、投資家、政府向けの「世界原子力投資ガイド」(World Nuclear Investment Guide)の全5モジュールを公開した。 先行公開していた2モジュールに、投資判断に必要な原子力の価値と経済性、資金調達の準備、事業の枠組みの設計を扱う3モジュールを追加した。 9月9〜11日にロンドンで開催された世界原子力シンポジウム初日のファイナンス・サミットに合わせて公開した。

同ガイドは、原子力関係者が蓄積してきた建設・運転の経験を、金融が用いる費用、リスク、価値の枠組みに置き換え、投資判断に役立てることを目的とする。 作成には金融機関や専門サービス会社も参加した[1]。

WNAは、各国政府が掲げる2050年の原子力発電設備容量14.46億kWe(グロス、WNA「世界原子力発電見通し」初版の値)が実現した場合、2025〜50年にバリューチェーン全体で約6兆ドル[2]の資金需要が生じると試算。 年平均では約2,500億ドルと、2025年の推計投資額約800億ドルの約3倍に上る。 目標達成には、2030年代半ばに新設と投資を加速させる必要があるという。

資金需要の90.5%は大型炉、小型モジュール炉(SMR: small modular reactor)、既設炉の長期運転が占め、フロントエンドとバックエンドは合計で1割未満にとどまる。 試算は2025年ドルのオーバーナイト費用で、建設期間中の利息や資金調達費用、地層処分に必要な5,140億ドルは含まない。 WNAは、地域別の試算を加えた完全版を2026年中に公開する予定。

またWNAは、原子力の資金調達上の課題は、主として技術ではなく「価値評価」にあると指摘する。 電力系統の信頼性やエネルギー安全保障などの価値が、個別プロジェクトの採算に反映されにくいためだ。 原子力の発電コストに占める燃料費は15〜20%にとどまり、加重平均資本コストが1%ポイント低下すれば、均等化発電原価は1MWh当たり約10〜20ドル下がり得るという。

さらに、プロジェクトの資金調達コストは、技術、財務、プロジェクト全体の準備状況という3側面の平均ではなく、弱い側面に左右されると指摘。 法務・契約・規制面が資金調達の障壁となりやすいとしている。


  1. 原子力・金融・政策・エネルギー分野の諮問委員会と、WNAの経済・法務・資金調達ワーキンググループ下に設けられたタスクフォースが助言した。BNPパリバ、欧州投資銀行、KPMG、ロスチャイルド・アンド・コー、EY、ホワイト&ケースなどが参加している。WNAは、結論と提言は自身の見解であり、両者への参加は内容の是認を意味しないと断っている。 ↩︎

  2. 本報告書中に記載のドル額は2025年ドルによって計算されています。↩︎

 

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