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英ジョンソン首相、CO2排出量の実質ゼロ化に向け原子炉の新設を確約

19 Nov 2020

B.ジョンソン首相 ©UK Government

英国のB.ジョンソン首相は11月18日付けの電子版フィナンシャル・タイムスに寄稿し、2050年までに英国内の温室効果ガス(GHG)排出量の実質ゼロ化を目指して重要施策を10項目に絞り込んだ「緑の産業革命に向けた10ポイント計画」を公表した。

英国では2019年6月に、GHG排出量を2050年までに実質ゼロとするための法案が成立し、首相は「10ポイント計画」の当面する重要施策の一つとして新規原子炉の建設を約束。今回の計画では、大型炉のみならず小型炉モジュール炉(SMR)や先進的モジュール炉(AMR)に至るまで、開発のための資金を政府が5億5,000万ポンド(約756億円)以上投資する方針を明らかにしている。

「10ポイント計画」全体で、政府は民間部門の約3倍に相当する120億ポンド(約1兆6,500億円)の投資を計画しており、この支援により、地球環境の保全・修復に役立つ「緑の雇用」が約25万人分創出される。ジョンソン首相は同計画について、「雇用を促進し人々の生活様式を維持しつつ、GHG排出量の実質ゼロ化を達成するための『世界的ひな形』になる」と強調。同計画を実行することで、英国は緑の産業技術とそのための資金調達で世界の模範的先駆者となるとした。同首相はまた、GHG排出量の実質ゼロ化を牽引するタスク・フォースを設立するとしている。

同計画の中で、先進的原子炉の新規建設は3番目のポイントとして挙げられており、政府はその中で、輸送部門や熱供給部門における低炭素電力の需要が増大し、英国の電力供給システムは2050年までに2倍の規模に成長・拡大すると予想。原子力は信頼性の高い低炭素電源であるため、英国内ではすでに、ヒンクリーポイントC原子力発電所のような大型炉の建設が進められている。国内ではまた、SMRやAMRへの投資が拡大するなど、原子力発電の将来には大きな期待が寄せられている。

60年以上前に英国では、本格的な民生用原子力発電所が世界で初めて建設されたことから、政府は現在でも国内に関係技術のポテンシャルがあると考えている。導入規模や技術の世代とは無関係に、新しい原子炉は低炭素な電力と雇用、および経済成長をもたらすので、政府は大型炉の建設を支援するため開発基金を提供する。

政府はまた、次世代原子力技術に対する一層の投資を予定。政府内の「歳出見直し」やコストパフォーマンスの点で問題がなければ、政府は「先進的原子力基金」として最大3億8,500万ポンド(約529億円)を充当する方針である。このうち最大2億1,500万ポンド(約295億円)が国内のSMR開発に投じられるほか、民間においても「マッチ・ファンディング」方式を通じて最大3億ポンド(約412億円)の投資機会に道が開かれるとした。

政府はさらに、AMRの研究開発プログラムに最大1億7,000万ポンド(約233億円)の投資を約束している。ここでは、800℃以上の高温で稼働し水素や合成燃料を効率的に生産できる高品質の熱供給炉の開発を想定。これらは、二酸化炭素の回収・貯留(CCUS)や水素生産、および洋上風力発電への投資を補うものと位置付けられており、政府としては遅くとも2030年代初頭にこのようなAMRやSMRの実証炉を国内で建設するとともに英国を原子力国際競争の最前線に押し上げる計画である。

なお、政府はこのほか、これらの技術を市場に出す手助けとして、規制枠組みの整備と関係サプライチェーンの支援に追加で4,000万ポンド(約55億円)を投資するとしている。

(参照資料:英国政府の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの11月18日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)

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