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ブルガリア、SMR建設の実行可能性調査でニュースケール社と覚書

18 Feb 2021

ニュースケール社のSMR発電所完成予想図 ©NuScale Power

米国のニュースケール・パワー社は2月17日、ブルガリアのコズロドイ原子力発電所内で同社製の小型モジュール炉(SMR)を建設する可能性を探るため、コズロドイ原子力発電所増設会社(KNPP-NB)と協力覚書を締結したと発表した。

コズロドイ発電所では現在、5、6号機(各100万kWのロシア型PWR=VVER)のみが稼働中だが、これらは同国唯一の原子力発電設備であり、総発電量の約35%を賄っている。ブルガリア内閣は昨年10月14日、欧州連合(EU)が目標に掲げる「2050年までに気候中立(CO2の排出量と吸収量がプラスマイナスゼロ)を達成」を前進させるためにも、同発電所の設備容量拡大に向けた可能性調査や準備活動を実施すると閣議決定した。

内閣はその際、世界の潮流に沿って、将来的にSMRを第3世代+(プラス)の大型炉に代わる選択肢として活用する方針を明示。コズロドイ発電所では設備容量の上限を定めていないため、原子炉の増設に向けて現在進めている活動の範囲を広げることや、様々な原子炉技術を考慮することなどを指示した。また、具体的な措置として、SMRのデベロッパーを含む米国企業と新たな原子炉技術の開発協力で交渉に入るなど、必要なアクションを取るようエネルギー大臣と国営エネルギー持ち株会社(BEH)に命じている。

実際、ブルガリア政府は今年1月、頓挫したベレネ原子力発電所のために調達した一部機器を使って、コズロドイ発電所7号機の建設を検討すると発表している。この方法が最も経済的であり、環境面や技術面でも適していると述べた一方、SMRなどの新技術を採用した原子炉を建設する可能性についても調査を継続するとしていた

ニュースケール社が今回覚書を結んだKNPP-NB社は、既存のコズロドイ発電所サイトに新たな原子炉を建設するために設立された株式会社。閣議決定に沿って、KNPP-NB社は先進的な原子炉技術を同発電所に導入する方針であり、ニュースケール社のSMRについても技術的な適性を評価する。ニュースケール社側もKNPP-NB社のこのような活動に協力するため、様々な分析・調査をサポートする予定。具体的には、実行可能性調査の実施も含めた開発スケジュールの作成や費用見積もり、エンジニアリングや許認可手続きなど、ニュースケール社製SMRの導入で双方が合意した項目を支援していく。

ニュースケール社は2016年12月末日、SMR設計としては初の設計認証(DC)審査を原子力規制委員会(NRC)に申請した。その後約4年半の審査を経て、NRCは2020年9月29日付けの連邦官報で、「電気出力各5万kWのモジュール×12基」で構成される同社製SMRに「標準設計承認(SDA)」を発給したと発表した。同設計の初号機については、ユタ州公営共同電力事業体(UAMPS)がエネルギー省傘下のアイダホ国立研究所内で建設することを計画しており、ニュースケール社は2027年までに最初のモジュールを納入する考え。また、米国以外では、カナダやヨルダン、チェコ、ルーマニアで同社製SMRの建設可能性調査に関する覚書がニュースケール社と結ばれている。

(参照資料:ニュースケール社の発表資料、コズロドイ原子力発電所増設会社(ブルガリア語)の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの2月17日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)

 

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