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OECD/NEAが福島第一原子力発電所事故後の対応等で報告書公表

04 Mar 2021

経済協力開発機構・原子力機関(OECD/NEA)は3月3日、福島第一原子力発電所事故後の10年間に日本の内外で取られた対応とその進展、教訓、今後の課題等をまとめた報告書「Fukushima Daiichi Nuclear Power Plant Accident, Ten Years On:Progress, Lessons and Challenges」を公表した。

OECD/NEAは、日本の政府当局はこの事故後、技術面や組織面で行動を起こし改革も実行するなど精力的に取り組んできたとの認識を示している。中でも、同事故で組織構造的な欠点が明らかになったことから、政府当局は原子力規制庁(NRA)を設置して原子力関係の規制・監督方法を完全に再設計、組織面のみならず、政策面や財政面においてその独立性を確保したとしている。

OECD/NEAの報告書はまた、事故事象が発生した場合でも国内の原子力施設が一時的な停止から回復し安全な運転を保証するため、NRAが新たな規制要件を迅速に打ち出したほか、リスクインフォームド規制の考え方に基づいて新たな監視プロセスの導入も模索していると評価。日本はさらに、施設の安全性向上と緊急時対策をさらに進め、原子力損害賠償が保証されるよう法改正も行っているとした。

しかし、日本が今後も長期的に復旧・復興の努力を続けていく上で、福島第一原子力発電所の除染のほか、事故や津波の影響を受けた周辺コミュニティの再活性化など、直面する課題はまだ数多く残っている。これには、技術的な問題のほかに規制や法改正関係の問題も含まれるが、OECD/NEAによれば、現在進められているコミュニティの再建や経済復興に関しては、彼らとの合意の下、コミュニティが一層強靭な社会的復活力を身に着けられるような枠組みを有効にしなくてはならない。

今回の報告書はまた、OECD/NEAおよびその他の国際機関との協力を通じて、同事故の技術側面に関する理解がかなり深まっていると指摘。それによって、すべての原子力開発利用国で施設の安全性や緊急時計画、環境面や社会・経済面および政策的な側面が改善されるよう、支援を続けなくてはならないとした。

こうしたことからOECD/NEAは今後、同事故の経験から関係する知見をさらに深めていくとともに、事故後の影響に対する日本の長期的な取り組みを一層強力に支援すると表明。以下の9分野について日本に提案を勧告、その進め方についても助言している。

(1)原子力規制において、効率的でバランスの取れた独立性や公開性、透明性を確保する。

(2)防護レベルを向上させるために原子力施設の安全システムを統一するなど、同一システムについて系統的かつ全体的なアプローチを取る。

(3)難しい放射線環境下における安全性の維持や先進的ロボット技術の活用など、廃止措置技術の開発で国際協力に積極的に参加する。

(4)福島第一原子力発電所の廃止措置を成功裏に実施するため、放射性廃棄物の管理・処分計画を十分に検討する。

(5)どのような原子力損害に対して賠償が行われ、賠償額がどのように算出されるかなど、当事者が明確に理解できるよう、原子力損害賠償制度の適用と解釈について引き続き改善を図る。

(6)ステークホルダーがリスク・コミュニケーションを一層深く理解し、一般国民が政策決定にさらに参加することを目指して、リスク情報を正確に伝えるための努力を継続する。

(7)福島第一原子力発電所事故から復興するには、物理的側面や健康科学的面だけでなく環境面や社会・経済面、倫理面、感情面の考慮が必要なため、影響を受けた住民のメンタル的健康に一層配慮する。

(8)廃止措置に使われる遠隔・ロボット技術などの新しい技術や方策を経済復興の原動力として活用し、経済的再開発の機会をさぐる。

(9)福島第一原子力発電所事故は福島県民や日本国民、政府当局、そして世界のコミュニティにとって悲劇的な出来事だったが、この経験は学びと探求の源でもあるため知識管理システムを構築してその知見を継承することが重要である。

(参照資料:OECD/NEAの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの3月3日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)

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