原子力産業新聞

海外NEWS

IEA、CO2排出量の実質ゼロ化に向けた7原則を公開

05 Apr 2021

©IEA

国際エネルギー機関(IEA)は3月31日、CO2排出量の実質ゼロ化を主要議題とする次回の国連気候変動枠組条約・締約国会議(COP26)に向けて、IEA加盟国など40か国以上が参加するオンライン・サミットを開催した。

その中で、クリーンな経済成長と回復力の達成を劇的に加速させるための指針として「7つの主要原則」を新たに公開。新型コロナウイルスによる感染危機が終息した後の持続可能な経済活動の必要性や、CO2排出量の削減に当たり、この10年間に実行可能なロードマップを作成する重要性などを強調している。

この「ネット・ゼロ・サミット」では、今年11月の英国グラスゴーにおける「COP26」で議長を務める英ビジネス・エネルギー・産業戦略省(BEIS)のA.シャルマ大臣と、IEAのF.ビロル事務局長が共同で司会を務めた。

ビロル事務局長は「このサミットで、地球温暖化の危機の重大さやCO2排出量の実質ゼロ化に向けて緊急にアクションを取る必要があることで、世界の大多数の意見が一致した」と表明。これと同時に、各国経済の主要部門すべてにおいて、クリーンエネルギー技術を早急に開発・利用できるよう国際協力を強化する必要性が浮き彫りになったと述べた。同事務局長によると、クリーンエネルギーへの移行を迅速に進めたいのであれば、世界の経済大国同士が一層効果的かつ緊密に協力しなければならない。今回IEAが提示した主要原則はそのために何が必要であるか示したもので、IEAとしてはこのような国際協力メカニズムが「COP26」で強化されるよう、議長国である英国を全面的に支援すると述べた。

同事務局長はまた、各国政府のアクションをさらに強力に支援していくため、世界のエネルギー部門で2050年までにCO2排出量の実質ゼロ化を達成するまでの最初の「包括的ロードマップ」を5月18日に公表すると約束。同ロードマップでは「COP26」のシャルマ議長からの要請に応え、世界の平均気温上昇を産業革命以前との比較で1.5℃に抑える際に、各国政府や企業、投資家、市民らが必要とする経路を設定するとしている。

IEAが今回示した「7つの主要原則」は以下のとおり。

1、持続可能な経済の復旧は、CO2排出量の実質ゼロ化に向けて一世一代の投資金を提供するため必要である。

2.IEAが5月に公表するロードマップに基づき、加盟各国の政府が2030年までとそれ以降のCO2実質ゼロ化を達成できるよう、明確で意欲的かつ実行可能なアクションのロードマップをそれぞれの事情に応じて作成することが重要になる。

3.加盟各国が持続可能なエネルギーシステムを構築する際、IEAは技術面や経済面のリスクをコントロールし方向性を決められるよう支援しているが、このようなメカニズムをさらに増強して加盟各国がそれぞれの良好事例を共有し、技術面で協力すればCO2実質ゼロ化への移行はさらに早まる。

4.気候中立に資するエネルギー技術の開発と利用は、エネルギーを消費するすべての部門において迅速かつ持続可能なエネルギーの移行を可能にする。このため、世界規模のCO2実質ゼロ化に向けて、各部門の技術革新を促進する官民の国際的な調整メカニズムを一層強化・統合することが重要である。

5. 官民の投資を結集・管理・評価することによって、CO2排出量の実質ゼロ化に向けて拍車をかけることができる。2050年までに実質ゼロ化に向けた活動を軌道に乗せるため、発電や蓄電に要する総投資額を2030年までに年間1兆6,000億ドル以上に増額する必要がある。

6. 各国がクリーンエネルギーへの移行を模索するなか、環境面や社会・経済面で個人やコミュニティに及ぶ影響への対処、すべての人々がCO2排出量実質ゼロの経済に参加できるよう教育・訓練を施すことも重要になる。このため、人間を最優先とする移行が道義的、政治的に求められる。

7. エネルギーの移行を進めつつ、その供給保証を維持することも重要であるため、各国政府や企業等は既存の課題に対処するとともに、新たな課題を未然に防ぐ必要がある。各国政府は協力して、エネルギーの供給保証や世界のエネルギーシステムの回復力をさらに強化する新たなメカニズムの分析を行うべきである。

(参照資料:IEAの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの4月1日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)

cooperation