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「SMR技術でカナダが世界のリーダーに」とのFS結果

16 Apr 2021

©Government of Ontario

カナダのオンタリオ州、ニューブランズウィック(NB)州、サスカチュワン州の各首相は4月14日、3州の電気事業者が共同で実施した小型モジュール炉(SMR)開発の実行可能性調査(FS)の結果を公表した。SMR開発が同国の経済成長に大きく貢献すると結論づけている。

また、アルバータ州は同日、これら3州が多目的SMRをカナダ国内で開発・建設するため、2019年12月に締結した協力覚書に加わったと表明。これら4州の首相は、地球温暖化とエネルギー需要への取り組み、および経済成長と技術革新を支援するクリーンエネルギー・オプションとして、SMR開発を協力して進めることで合意している。

FSの結果報告書によると、出力30万kW以下のSMRはカナダのエネルギー需要を満たす一助となるだけでなく、温室効果ガスの排出量を削減し、SMR技術でカナダを世界のリーダーに押し上げることが期待される。また、既設の大容量送電網のみならず、遠隔地のコミュニティや資源開発プロジェクトで使用する小容量送電網にも組み込むことができると表明している。

今回のFSは3州の協力覚書の一環として、各州の州営電力であるオンタリオ・パワー・ジェネレーション(OPG)社、ブルース・パワー(BP)社、NBパワー社、およびサスク・パワー社が州政府の要請を受けて行った。これら3州ではすでに、複数のSMR開発プロジェクトが進められているが、FS報告書はそれらについて3州の州政府が考慮すべき方向性を以下のように提案している。

①(オンタリオ州がダーリントン原子力発電所敷地内で進めているSMR計画について)送電網への接続が可能な出力30万kW程度のSMR初号機を2028年までに建設し、これに続くフェーズで最大4基のSMRの最初の一基を2032年までにサスカチュワン州内で完成させる。

ここでは複数の地点で早急かつ効率的にSMRを建設できるよう、共通技術を1つに絞り込みSMR群を一まとめに建設する“フリート”アプローチを取る。これに向けて、OPG社とBP社、およびサスク社は協力して、2021年末までに採用技術と開発企業を選定する。

②(NB州がポイントルプロー原子力発電所敷地内で進めているSMR計画については)第4世代の先進的SMR実証炉を2種類、建設する。

NB州が協力関係を結んでいる2社のベンダーのうち、米ARCクリーン・エナジー社のナトリウム冷却・プール型高速中性子炉「ARC-100」の実証炉を2030年までに完成させる。また、英モルテックス・エナジー社の「燃料ピン型溶融塩炉(SSR-W)」と廃棄物リサイクル施設を2030年代初頭までに稼働可能にする。

③遠隔地のコミュニティや鉱山で主に使用されているディーゼル発電機に代わって、超小型SMR(MMR)を導入する。このため、米ウルトラ・セーフ・ニュークリア社(USNC)が開発した電気出力0.5万kWの小型モジュール式高温ガス炉を、2026年までにオンタリオ州のカナダ原子力研究所チョークリバー・サイトで建設する。

このMMRに関してはすでに2019年3月、USNC社のパートナー企業であるカナダのグローバル・ファースト・パワー(GFP)社がチョークリバー・サイトで実証炉を建設するため、サイト準備許可(LTPS)をカナダ原子力安全委員会に申請している。

FS報告書によると、これら3つの方向性すべてで「カナダに新たな雇用を生み出し経済成長に貢献する」ことが期待できる。地球温暖化など地球規模の課題への取り組みにも資することから、SMR技術とその専門的知見を輸出できる可能性もあるとした。

また、すべての方向性において技術面と商業面両方に実行可能性がある一方、重要な点は連邦政府とコストやリスクを共有することだとFS報告書は指摘。これらのSMR技術は、廉価なクリーンエネルギーを提供しつつカナダが2030年までに石炭火力を全廃し、2050年までにCO2排出量の実質ゼロ化を達成する一助になる。

また、これらのSMRプロジェクトは原子力産業界の活動に新たなサブカテゴリ―を創出する。カナダは世界中のSMR建設で大きな役割を果たせる有利な立場にあるため、3つの方向性すべてが順調に進展するよう連邦政府からタイムリーな支援を確保することが重要になる。

さらに、勧告事項としてFS報告書は、州政府が各州それぞれの経済優先事項や必要性に沿ったやり方で連邦政府と協力し、カナダのCO2排出量削減と経済成長を支援していくべきだとした。SMR開発で得られるビジネス機会を共有しながら、産業界と州政府、および連邦政府は協力してカナダ中で経済成長と雇用を促し、輸出も視野に入れた理想的な事業環境を創出、革新的エネルギー技術の開発を続けるべきだとしている。

なお、アルバータ州が新たに加わった3州の協力覚書における次のアクションとして、4州の州政府は共同戦略計画案を策定するとしており、今春中に完成する見通しである。また、これら4州は原子力産業界全体との協力も継続し、原子力技術革新の最前線にカナダが留まれるよう力を合わせる方針。今後の経済成長や雇用の創出、技術革新、低炭素社会の構築に向けて、新たな機会を模索するとしている。

(参照資料:オンタリオ州NB州サスカチュワン州アルバータ州の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの4月15日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)

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