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IEAの「グローバル・エナジー・レビュー」、2021年に世界の原子力発電量は2%増と予測

21 Apr 2021

©IEA

国際エネルギー機関(IEA)は4月20日、2021年の世界のエネルギー需要や経済成長、CO2排出量の方向性などを評価する報告書「グローバル・エナジー・レビュー(Global Energy Review)2021」を公表した。

2021年は新型コロナウイルスによる感染の世界的爆発(パンデミック)が2年目を迎え、主要経済大国ではワクチンの投与が開始されたほか、経済危機に対する広範囲の対応によって大幅な経済成長やエネルギー需要のリバウンドが予想される。原子力による総発電量も2020年は過去最大の下げ幅を記録したが、2021年は運転開始した新規原子炉の基数が閉鎖基数を上回るなど、2%増加する見通しだと指摘している。

この報告書でIEAは毎回、最新の統計データや経済成長を分析した結果をまとめている。今回の主要な判明事項としては、パンデミックの第3波により移動の制限が長期化し、世界のエネルギー需要も引き続き抑制されるものの、ワクチンの投与や経済刺激対策によって希望の光が見え始めていると指摘した。また、2021年は世界のエネルギー需要が4.6%増加し、2020年の下げ幅である4%を相殺すると見込まれるが、その70%ほどはアジアや中南米、東欧などの新興市場諸国や途上国によるものだと述べた。

エネルギー部門からの年間CO2排出量は、石炭火力の大幅な需要増により2021年は世界全体で過去2番目に大きい数値(15億トン増の合計330億トン)となる一方、輸送部門を中心に石油需要量が2019年レベルを下回ることから、CO2排出量の拡大影響は和らげられるとIEAは予想。さらに、世界全体の電力需要量は2021年に4.5%増加する見通しだが、これは2020年の下げ幅の約5倍という大きな数値である。これによってエネルギー最終消費量における電力のシェアは20%以上になるが、増加分の約80%は中国など新興市場諸国からのものだとしている。

原子力発電量の2020年実績と2021年の見通し

原子力に関しては、IEAは世界全体の総発電量が2020年に約4%低下したと指摘。これは2011年の福島第一原子力発電所事故以降最大の下げ幅で、主なものとして欧州連合(EU)で発電量が11%減、日本で33%減、米国で2%減になったことを挙げた。EUで低下した理由は、電力需要の低迷や保守点検にともなう原子炉の一時的な停止や永久停止など。日本では、規制基準に定められたテロ対策工事が期限内に完了しなかったことが影響した。一方、中国とロシアの原子力発電量は2019年と2020年に運転開始した新規原子炉によって、それぞれ5%と3%増加。ベラルーシとアラブ首長国連邦(UAE)でも初の原子炉が営業運転を開始したほか、後続の原子炉も建設工事が進展中だとしている。

2021年の見通しとしてIEAは、2020年に低下した分のわずか半分程度とはいえ、原子力総発電量が2%増加すると予測。2020年後半と2021年の第1四半期に世界では新たに7基の原子炉が送電を開始しており、同じ時期に永久閉鎖された3基分の電力量以上のものを相殺する。さらに、2021年末までに最大10基の新規原子炉が送電網に接続される見通しで、これには中国の4基が含まれるとした。ただし設備容量が増大しても、この年に世界全体の原子力総発電量は2019年実績をわずかに下回るとIEAは予測。先進諸国だけで見ても、2021年の原子力発電量はわずかに上昇するものの、2019年実績を6%下回る。それでも、これらの諸国で原子力が最大の低炭素電源であることに変わりは無いとIEAは強調している。

国別で見ると、米国では2021年に5基の原子炉が閉鎖予定であるため、IEAは発電量がさらに下がり、2019年レベルからは4%以上低下するとした。一方、日本では原子炉の再稼働が進み、2021年の発電量は6%の上昇が予想されるが、これは2020年に低下した電力量300億kWhのわずか一部を相殺したに過ぎないとIEAは指摘した。

また、欧州では原子力大国である仏国の電力需要が増大し、スロバキアで新たな原子炉の運転開始が期待されることから、欧州全体の原子力発電量は2021年に2%以上上昇する見通し。ただし、これは2020年に低下した分を埋め合わせるには不十分な量だと述べた。

さらに、新興市場諸国や途上国では、2021年に原子力発電量が5%以上上昇するとIEAは見込んでいる。中国を中心にインドやUAE、パキスタン、ロシアなど複数の国で新規の原子炉が稼働を開始するためで、これにより、2021年の世界の原子力発電量は2019年レベルから8%上昇。世界全体の中で新興市場諸国と途上国が占めるシェアは、2019年実績の29%から3分の1程度に上昇すると強調している。

(参照資料:IEAの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの4月20日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)

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