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仏EDFがインド原子力発電公社にジャイタプール計画の契約条件提案書を提出

26 Apr 2021

ジャイタプールにおけるEPRの完成予想図©EDF

フランス電力(EDF)は4月23日、インド南西部のジャイタプールで160万kW級の欧州加圧水型炉(EPR)を6基建設するプロジェクトについて、法的拘束力のある技術・商業面の契約条件提案書を22日付でインド原子力発電公社(NPCIL)に提出したと発表した。

今回の提案書に基づき、両者は6基の建設に必要な機器の調達やエンジニアリング調査の実施に向けて協議を開始。EDFとしては今後数か月以内に、拘束力のある枠組み協定の締結を目指すとしている。仏印最大の二国間協力となる同プロジェクトでは、世界でも最大規模の960万kWの原子力発電設備を建設予定。6基からの年間発電量は最大750億kWhに達する見通しで、これにより国内7千万世帯の電力需要に応えるとともに、年間約8千万トンのCO2排出を抑える計画である。

この建設プロジェクトについて仏印両国は、2010年に最初の2基の建設に関して枠組み合意に達したが、サプライヤーに一定の賠償責任を盛り込んだインドの原子力損害賠償法や、建設予定地における住民の抗議活動の激化等により実質的な作業は棚上げとなった。その後EDFとNPCILは2018年3月、機器の調達活動等に関する枠組みや仏印両国の役割と責任の分担、次の段階のスケジュール等を特定するため、双方の国家元首立ち合いの下で産業枠組み協定を締結。同年末には、法的拘束力を持たない契約条件提案書をEDFが提出していた。 

EDFによると、今回の提案書提出は両者がそれ以降に実施した共同作業の成果であり、EDFはパートナー企業とともに建設プロジェクトで提供する技術の詳細設定を明示。ここではNPCILがジャイタプールについて伝えたサイト情報や、両者が共同で実施したサイトの詳細な調査結果を考慮に入れている。また、6基分の機器の調達やエンジニアリング調査の実施にともなう詳細な商業条件が盛り込まれている。

同提案書はまた、EDFとNPCIL双方のスキルを補完し合う内容となった。仏印両国の原子力産業部門の間で長期的な協力関係の構築を目指し、EDFは以下の点を提案している。すなわち、

・EDFは、EPR技術の提供者としてエンジニアリング調査と6基分の機器調達を担当。実際の機器調達は子会社であるフラマトム社のノウハウを頼みとしており、同社が6基分の原子炉系統設備を供給する。一方、タービン系統に関しては、仏アルストム社が開発した蒸気タービン「アラベル」も含め、EDFと長年パートナー関係にあるGEスチーム・パワー社が供給する。EDFはまた、6基すべてのEPRについて性能を保証し、NPCILの将来的な運転チームに研修訓練を提供する。

・一方、NPCILは建設される発電所の所有者兼運転者となるため、6基すべての建設工事と起動に責任を負うほか、インド安全規制当局によるEPR技術の承認など必要な許可や認証をすべて取得。建設期間中は特に、他のEPR建設プロジェクトからのフィードバックなど、必要な支援をEDFとそのパートナー企業から得ることになる。

なお同プロジェクトは、インドが世界の研究開発・製造ハブとなることを目指した国家産業政策「メイク・イン・インディア」と、技術者養成政策「スキル・インディア」に沿ったものになる。EDFはインド国内の製造企業に同プロジェクトへの参加を呼び掛けており、そのための戦略も策定中。徹底した調査により、機器サプライヤーとなり得るインド企業約200社を予備的に選定した。

また、詳細なエンジニアリング調査を実施するため、その基盤となるものをEDFがインド国内で構築予定。さらに、プロジェクトの実行に必要なスキルの開発をインド国内で支援するため、エンジニアや技術者を教育訓練する総合研究拠点の創設に向け、予備的実行可能性調査を実施する。これには、仏国の国際原子力学院(i2EN)とインドのビールマータ・ジジャーバーイー工科大学(JVTI)が協力する予定である。

(参照資料:EDFの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの4月23日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)

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