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英政府がSMRと先進的原子炉設計を設計認証審査の対象に、申請ガイダンスを公表

13 May 2021

©BEIS

英国のビジネス・エネルギー・産業戦略省(BEIS)は5月11日、包括的設計認証審査(GDA)の対象を小型モジュール炉(SMR)とその他の先進的原子炉設計を含む「先進的原子力技術」に広げると表明し、そのための申請ガイダンスを公表した。

新たな原子炉設計を開発中の企業が適切なGDA申請準備を整えられるよう、政府が審査で要求するデータ等について情報提供することが目的である。この中でBEISは、申請書を提出する3か月前に申請の意思を連絡するよう指示。こうしたことを通じて、GDAを柔軟性のある時代に即した審査とする考えを明らかにした。

BEISはまた、同じ日に「先進的原子力技術」の開発政策を示した文書を更新し、このような技術は、国内経済を低炭素なものに移行させる上で重要な役割を担うとの認識を改めて表明している。

GDAは、英国内で初めて建設される原子炉設計に対して行う事前の設計認証審査。原子力規制庁(ONR)が対象設計の安全・セキュリティ面について、環境庁(EA)が環境保護と放射性廃棄物管理の側面について、英国の基準を満たしているか、約5年かけて評価する。

これまでに、フラマトム社製の「欧州加圧水型炉(EPR)」とウェスチングハウス(WH)社製「AP1000」、および日立GE社製の「英国版ABWR」に対し、ONRが設計承認確認書(DAC)を、EAが「設計承認声明書(SoDAC)」を発給済み。ONRらは現在、中国広核集団公司(CGN)を中心とする中国企業が開発した英国版の「華龍一号」設計について審査を行っている。

更新した政策文書の中で、英政府は開発中の様々な原子炉設計を意味する「先進的原子力技術」の定義として、「従来の原子炉より小型のもの」で、「工場内で製造した後、設置場所まで輸送が可能なほか、建設リスクやコストを軽減できるもの」と説明。これらの技術は一般的に、①SMR:「第3世代の水冷却炉(軽水炉、重水炉)で規模の小さいモジュール設計」と②AMR:「第4世代以降の先進的モジュール炉で、新しい冷却方式や燃料、熱供給機能等を備えるとともに、大幅なコスト削減の可能性がある設計」に分類されるとした。

BEISはまた、B.ジョンソン首相が2020年11月に公表した「緑の産業革命に向けた10ポイント計画」と、BEISが2020年12月に公表した新しい「エネルギー白書」に言及。これらを通じて、英政府は2050年までに国内の温室効果ガス(GHG)排出量を実質ゼロ化する方針であり、そのために大型炉に加えてSMRや先進的原子炉を国内で建設するとの方針を強調している。

具体的な10項目の重要施策を示した「10ポイント計画」のなかで、英政府は「先進的原子力基金」として最大3億8,500万ポンド(約593億円)を充当すると表明。これには、SMR開発資金の最大2億1,500万ポンド(約331億円)が含まれるとともに、AMR研究開発プログラムに対する最大1億7,000万ポンド(約262億円)の投資が約束された。政府はまた、これらの技術開発にともなう規制枠組みの整備や、これらを市場に送り出すサプライチェーンへの支援で、別途4,000万ポンド(約62億円)を投資する計画。これらを通じて、SMRの初号機とAMRの実証炉を2030年代初頭に完成させたいとしている。

(参照資料:英政府の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの5月12日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)

 

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