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英ロールス・ロイス社、今秋の設計審査開始に向けSMRの出力を増強

18 May 2021

© Rolls-Royce

英国で小型モジュール炉(SMR)開発の官民企業連合を率いるロールス・ロイス社は5月17日、開発の第一段階が終了した現時点での最新設計を公開。出力を44万kWから47万kWに増強したことを明らかにした。

同企業連合は2030年代初頭の初号機完成を皮切りに、2035年までに最大10基のSMR建設を目指している。折しも、英国では先週11日、ビジネス・エネルギー・産業戦略省(BEIS)が包括的設計審査(GDA)の対象として、SMRを含む「先進的原子力技術」まで範囲を広げると表明。このため同企業連合は、今年の後半にも最新設計のSMRでGDAの開始に漕ぎつけたいとしている。

ロールス・ロイス社の「英国SMR開発企業連合」には、仏国の国際エンジニアリング企業のアシステム社や米国のジェイコブス社、英国の大手建設エンジニアリング企業であるアトキンズ社、BAMナットル社、レイン・オルーク社などが参加。このほか、英国の国立原子力研究所(NNL)、および英国政府が原子力産業界との協力で2012年に設置した先進的原子力機器製造研究センター(N-AMRC)も加わっている。

今回の発表によると、第一段階の作業で同企業連合は発電所としての設計を調整・改善しており、200以上の重要項目について設計上の改良を図った。具体的には、機器類の配置見直し等で、追加のコストをかけずに出力を47万kWまでに拡大させた。また新たな設計では、美的なカットを施した屋根で発電所を覆い、周囲の景観とマッチする盛り土が発電所を取り囲んでいる。さらに、床面のレイアウトで一層の合理化を図ったことから、基礎伏図はさらにコンパクトになったとしている。

今後もこの開発プログラムを継続するにあたり、英国SMRの開発チームは「共同作業を実施する企業連合」から「独立した法人」に移行する方針である。一群のSMR発電所を、再生可能エネルギーと並んで、英国における低炭素エネルギーの拠点とするほか、これらが世界の低炭素化に資するよう輸出の機会を模索していく考えである。

同企業連合のT.サムソンCEOは、「地球温暖化の防止や経済の再生、およびエネルギー供給保証で原子力は中心的役割を果たす」と断言。そのためにも、「原子力は今後も廉価で信頼性が高く、投資の対象に適した存在である必要があり、発電所の製造方法も洋上風力の1MWh当たり約50ポンド(約7,700円)という価格と同程度でなくてはならない」と指摘した。

同CEOはまた、「世界の脱炭素化に向けて主要な役割を担うことができ、最終商品とほとんど同じレベルの製品を開発チームがすでに設計済みだ」と指摘。今秋にも同企業連合の設計をGDA申請することを強調した。

ロールス・ロイス社の発表によれば、SMRの開発プログラムにより英国内だけでも以下が見込まれている。

  • 2050年までに4万人分の雇用創出
  • 520億ポンド(約8兆円)の経済的利益
  • 発電所を構成する機器の80%は英国内で調達
  • 発電所の輸出で新たに2,500億ポンド(約38兆6,600億円)の貿易利益を目指す(エストニアとトルコ、およびチェコとはすでに、輸出に向けた覚書を締結済み)
  • 初号機の建設コスト約22億ポンド(約3,400億円)は、5基が完成するまでに18億ポンド(約2,800億円)まで低減可能
  • 1基あたり、少なくとも60年稼働

(参照資料:ロールス・ロイス社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの5月17日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)

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