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カナダ安全委の米社製SMR許認可手続きが技術審査段階に

21 May 2021

USNC社のSMR設計と炉心の黒鉛ブロック ©USNC

米国のシアトルを本拠地とするウルトラ・セーフ・ニュークリア社(USNC)は5月20日、同社製小型モジュール炉(SMR)をカナダで建設する計画について、カナダ原子力安全委員会(CNSC)が進めている「サイト準備許可(LTPS)」の審査がいよいよ、技術審査段階に移行すると発表した。

LTPSの審査申請書は2019年3月、カナダのプロジェクト開発企業で、USNC社と長年協力関係にあるグローバル・ファースト・パワー(GFP)社がCNSCに提出した。GFP社とUSNC社のカナダ子会社「USNCパワー社」は、カナダ・オンタリオ州のオンタリオ・パワー・ジェネレーション(OPG)社とともにこのSMRプロジェクトを推進するため、2020年6月に合弁事業パートナーシップを構築。LTPSの申請は、カナダにおけるSMR開発プロジェクトの許認可手続きとしては最初、現時点では唯一のもので、CNSCは2019年7月から同プロジェクトの環境影響評価を開始していた。

この審査が今回、環境影響声明書(EIS)案の技術審査に入ることになり、USNC社製SMRをGFP社がカナダ原子力研究所(CNL)のチョークリバー・サイトで建設・所有・運転するというこのプロジェクトは大きく進展。USNC社は2026年までに、熱出力1.5万kW、電気出力0.5万kWの第4世代の小型高温ガス炉「マイクロ・モジュラー・リアクター(MMR)」を完成させる計画である。また、将来的に、送電網が来ていない遠隔地で商業用のMMRを設置し、クリーンエネルギーを供給する事業モデルを確立。さらに、同設計を通じて、カナダが地球温暖化の防止に向けたCO2排出量の抑制目標を達成できるよう、支援するとしている。

USNC社の発表によると今回のLTPS審査の進展は、過去4年以上にわたってCNSCの「許認可申請前設計審査(ベンダー設計審査=VDR)」を同設計で受けていたことが有利に働いた。VDR審査は現在も継続中で、この審査の進展状況からは同設計は、正式な許認可審査においても設計上、安全上の要件を確実に満たすことができるとした。また、VDR審査では原子炉だけでなく、同炉で使用する「完全なセラミック・マイクロカプセル化(FCM)燃料」も審査の対象。FCMは事故耐性燃料の一つで、USNC社が独自に製造技術を開発・保有しており、CNLが先頃、その製造法の確かさを確認している。

USNC社のF.ベネリCEOは今回、「当社の革新的な原子炉設計とその進んだ安全性が証明された」と表明。近い将来、複数のMMRを統合したエネルギー供給システムを完成させられるよう努力を重ね、信頼性の高い安全な無炭素エネルギーの商業化を実証したいと述べた。

(参照資料:USNCCNSCの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの5月20日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)

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