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英政府、サイズウェルC発電所を使ったCO2回収システムの開発に補助金

25 May 2021

サイズウェルC原子力発電所の完成予想図©EDF Energy

英国イングランドのサフォーク州でサイズウェルC(SZC)原子力発電所の建設を計画しているEDFエナジー社は5月24日、完成した同発電所の熱を利用して大気中からCO2を直接捕捉するという「直接空気回収(DAC)」システムの開発計画に、英国政府から25万ポンド(約3,850万円)の補助金が提供されることになったと発表した。

EDFエナジー社は同発電所で、160万~170万kWの「欧州加圧水型炉(EPR)」を2基建設することを予定しており、現在、同社が申請した建設計画の「開発同意書(DCO)」を計画審査庁が審査中。同社によれば、SZC原子力発電所からの低炭素な熱を活用したDACシステムでは、コストの大幅な削減が可能になるだけでなく、規模を拡大したDACシステムならCO2の捕捉で一層大きな効果が期待できる。また、同発電所の「カーボン・ネガティブ化(=CO2排出量が森林保護や植林などによる吸収量より少なくなる)」にも貢献できるとしている。

EDFエナジー社はサイズウェルC発電所の建設に向けて、200社余りの関係企業や労組による企業連合を創設。DACプロジェクトで同企業連合に協力しているノッティンガム大学とストラタ・テクノロジー社、アトキンズ社、および斗山バブコック社は、すでにDACシステムのパイロット計画に向けて設計調査を実施中である。

英国政府からの補助金は、「2050年までに英国内の温室効果ガス(GHG)排出量の実質ゼロ化」を目指して、ビジネス・エネルギー・産業戦略省(BEIS)が設置した総額10億ポンド(約1,540億円)の基金「CO2排出量の実質ゼロ化に向けた技術革新ポートフォリオ(NZIP)」から提供される。B.ジョンソン首相は2020年11月、「緑の産業革命に向けた10ポイント計画」の重要項目の一つとして、DAC技術で大気中のCO2を直接回収し地中に貯蔵するという施策を挙げており、この基金もその際に設置方針が明らかにされていた。

サイズウェルC企業連合はNZIPの「温室効果ガスの削減(GGR)技術コンペ」で、SZC発電所にDACシステムを設置するというパイロット計画を申請していた。EDFエナジー社によると、同企業連合が提案したシステムは電力をほとんど必要としない一方、幅広い温度の熱を利用できるため非常に効率的。また、原子力は低炭素な熱を生産する最も廉価な方法であり、DACのような新技術ではコストを大幅に下げることが可能だとしている。

また、実証用のDACシステムだけで年間100トンのCO2を捕捉できるほか、SZC発電所の熱を利用した大規模なDACシステムでは、将来的に発電所としての能力に全く影響を及ぼすことなく年間150万トンのCO2を捕捉することが可能になる。これは、英国内の鉄道網が年間に排出するCO2以上の量になると強調している。EDFエナジー社はまた、建設期間中のCO2排出量も抑制できるよう水素の製造計画も同発電所で進めている。この水素は地元の輸送用だけでなく、産業用としても活用できるとしている。

今回の補助金獲得について、ノッティンガム大学の代表者は、「CO2を捕捉する革新的な材料物質の研究や、DAC技術と産業用の両方に対する捕捉技術の適用で当大学は国際的に高い評価を得ている」と表明。その上で、「2030年までに全く新しいDAC技術を市場に送り出せるよう産業界のパートナーたちと協力していきたい」と述べた。

斗山バブコック社の担当者は、「このような技術革新プロジェクトの参加企業に選定されたことは非常に喜ばしい」とコメント。同社の専門的知見をDACプロジェクトに提供することでパートナー企業と協力し、英国におけるエネルギーの移行で原子力が果たす重要な役割を支援したいと表明した。

(参照資料:EDFエナジー社英BEISの発表資料、原産新聞・海外ニュース、ほか)

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