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英モルテックス社のSMR、カナダのベンダー審査で第1段階をクリア

27 May 2021

SSR-W発電所の完成予想図 ©Moltex Energy

英国ロンドンに拠点を置くモルテックス・エナジー社は5月25日、同社製の小型モジュール炉(SMR)が、カナダ原子力安全委員会(CNSC)の「許認可申請前設計審査(ベンダー設計審査:VDR)」の第1段階を完了したと発表した。

モルテックス社は原子炉の開発企業で、現在出力30万kWの「燃料ピン型溶融塩炉(Stable Salt Reactor-Wasteburner: SSR-W)」を開発中。カナダ東部のニューブランズウィック(NB)州政府は2018年7月、同設計の商業規模の実証炉を2030年までに、州内のポイントルプロー原子力発電所敷地内で建設する計画を公表している。

VDR第1段階の完了は、この計画の実行に向けた大きな一歩になったとモルテックス社のR.オサリバン北米担当CEOは表明。「当社の技術が適切な方向に進んでいることの証であり、現在の顧客のみならず将来の顧客からも、当社の先進的原子炉設計に一層の信頼を置いてもらうことができる」とした。NB州のM.ホーランド天然資源・エネルギー相も、「重要な節目をクリアしたモルテックス社が残りのVDR審査を着実にクリアすることを期待する」と述べた。

VDRは、当該設計を採用した建設・運転許可の取得で事業者が正式な申請手続きを開始するのに先立ち、その設計がカナダの規制要件を満たしているか、メーカー側の要請に基づいてCNSCが実施する全3段階の評価審査。法的に有効な設計認証や関係認可が得られるわけではないが、カナダの規制要件に対する一般的な初期フィードバックが得られるほか、技術面の潜在的な課題を設計の早い段階で特定し解決策を探ることができる。

モルテックス社によると、同社のSSR-Wは既存炉の使用済燃料を燃料として使用することができる。同社はこれにより、NB州やカナダ全体、世界においても放射性廃棄物の量を低減することが可能であり、将来的に使用済燃料を処分する際も、コスト面の削減効果が大きくて環境にも優しく、社会的受容が可能な解決策の一つになるとした。同設計はまた、日中の電力需要がピークになる時間帯に、出力を2倍、3倍に増強することが可能だとしている。

2017年11月に開始したVDR第1段階の審査結果として、CSNCは「カナダの規制要件の意図を良く理解した設計であり、これらの要件を満たす確かな見込みがある」と結論付けた。ただし今後、追加の改善を要する点として、「モルテックス社の現行の管理システムでは、今後の設計活動を組織的にサポートできない」と指摘。また、同設計で使用する構造物・系統・機器(SSCs)の安全性の重要度区分が品質保証プログラムとリンクしておらず、VDRの第2段階では、これらを含む複数の課題が改善されたことを明示する必要があるとしている。

(参照資料:モルテックス社CNSCの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの5月26日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)

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