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米USNC社、自社開発SMRの燃料試験にオランダのペッテン炉を活用

24 Jun 2021

ペッテンにあるHFR©NRG

米国のウルトラ・セーフ・ニュークリア社(USNC)は6月22日、同社製の小型モジュール炉(SMR)で使用する「完全なセラミック・マイクロカプセル化(FCM)燃料」の性能や安全性を分析するため、オランダのペッテンにある高中性子束炉(HFR)を活用すると発表した。

USNC社が開発したSMRは第4世代の小型高温ガス炉「マイクロ・モジュラー・リアクター(MMR)」で、熱出力1.5万kW、電気出力は0.5万kW。カナダのプロジェクト開発企業でUSNC社と長年協力関係にあるグローバル・ファースト・パワー(GFP)社は2019年3月、このSMRをカナダで建設するため、同国の原子力安全委員会(CNSC)に「サイト準備許可(LTPS)」を申請。CNSCは同年7月から、SMR開発計画の許認可手続きとしては現時点で唯一のものであるこの申請を審査中である。

ペッテン炉を保有しているのは、オランダの原子力研究機関の「原子力研究コンサルタント・グループ(NRG)」。1955年から原子力産業界に支援を提供し続けており、原子燃料の試験では50年以上の実績がある。NRGはペッテン炉を使って原子燃料と材料物質の照射試験や照射後試験を行っているほか、原子炉と原子力関係機器で高品質の挙動シミュレーションを実施。重篤な病気の診断や治療など、医療用放射性同位体の新たな活用方法も開発している。

USNC社は今回、NRGとの協力により、ペッテン炉でFCM燃料の挙動に関する照射試験の実施を計画し、MMRの耐用年数である20年の間に燃料の十分な安全性が確保されることを実証する。ペッテン炉に付属するホット・セル研究施設も活用し、照射前と照射後の2段階で広範な試験を行う。

FCM燃料は事故耐性燃料の一つで、ウラン酸化物の核を黒鉛やセラミックスで3重に被覆した粒子型燃料(TRISO)の次世代版。USNC社は、従来型のTRISO燃料用として約50年前に開発された黒鉛マトリックスを炭化ケイ素(SiC)マトリックスに置き換え、高い放射線や高温に対する耐性を飛躍的に向上させている。

同社によれば、SiCマトリックスは高密度な気密バリアーの役割を果たし、MMRの運転時にTRISO燃料が破損した場合でも核分裂生成物の流出を防ぐ。また、FCM燃料の高い熱伝導率は燃料ペレットの温度を均一にするため、原子炉のピーク温度を下げることができる。このように、従来の原子燃料とは異なり、FCM燃料では通常運転時や破損時も含め、様々な温度の中で核分裂生成物を確実に閉じ込めることが可能だとしている。

USNC社のF.ベネリCEOは、「NRGにFCM燃料の性能認定をしてもらえば、MMRで無炭素電力を生産するという当社ビジョンを実現する重要な一歩になる」と指摘。「NRGの優れた技術能力と信頼性の高い試験によって、当社が社内で実施した性能評価が全面的に確認される」との期待を表明した。

(参照資料:USNC社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの6月23日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)

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