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ルーマニア、チェルナボーダ3、4号機の完成に向け米国との協定批准

25 Jun 2021

チェルナボーダ原子力発電所©SNN

ルーマニアの議会上院は6月22日、建設工事が中断されているチェルナボーダ原子力発電所3、4号機(各70.6万kWのカナダ型加圧重水炉)を完成させる協力プロジェクトも含め、同国が米国と2020年10月に仮調印した民生用原子力分野における政府間協力協定を批准した。

これで上下両院の承認が得られたことになり、同協定は今後、K.ヨハニス大統領が署名した後、官報に掲載される。欧州委員会(EC)もすでにこの協定を承認していることから、国営原子力発電会社(SNN)は両機でそれぞれ、2030年と3031年の送電開始を目指す。

同協定の批准は、ルーマニアがエネルギー戦略に盛り込んだ「原子力発電プロジェクトの実施と継続」における包括的枠組みとなる。また、同国の「エネルギーと気候変動に関する統合国家計画案(PNIESC)」でも、脱炭素化の目標達成とエネルギーの供給保証を進め、クリーンエネルギー社会に円滑に移行するための中心的項目となる。

同協定では具体的な協力事項として、3、4号機完成プロジェクトのほかに1996年から稼働している同発電所1号機(70.6万kWのカナダ型加圧重水炉)の改修工事実施、およびルーマニアの民生用原子力発電部門の拡充と近代化も明記されている。SNNによると、これらの協力プロジェクトにより、ルーマニアでは2031年以降、CO2の排出量が1/2になる見通し。ルーマニアは現在、唯一の原子力発電設備である同発電所1、2号機で年間1,000万トンのCO2を抑制しているが、3、4号機の完成によってこの排出抑制量が年間2,000万トンになる。

これらのプロジェクトはまた、国内サプライチェーンの発展に寄与するとSNNは指摘。新たに最大9,000名分の雇用が創出され、原子力産業界では研究開発と技術革新が促進される。これにともない、マクロ経済の飛躍的な成長効果が期待されるだけでなく、高い技術力を持った専門家が育成されるとしている。

SNNのC.ギタCEOは、「原子力発電所の運転事業者としては、プロジェクトを遂行する上で『時間』が非常に重要だ。2030年と2031年に3、4号機で首尾よく送電開始できたら、ルーマニアはエネルギーの移行や持続可能な価格のエネルギー消費に向けて、自国の資源に多額の資本を投下している国々と連携していく」とした。

同CEOはまた、「様々な国際研究の結果から、ルーマニアは既存の原子力発電所で運転期間を延長した場合の電気代がすべての電源の中で最も低価格になると考えている。また、新規の原子力発電所建設プロジェクトにもコスト面の競争力があるため、米国と協力して進める原子力プロジェクトには、このような競争力、およびCO2排出量の実質ゼロ化の達成という2重の利点がある」と強調している。

(参照資料:SNNルーマニア議会の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの6月24日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)

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