原子力産業新聞

海外NEWS

台湾の國聖1号機が早期閉鎖

06 Jul 2021

國聖(第二)原子力発電所©台湾電力

台湾電力は7月1日、新北市で40年間稼働した國聖(第二)原子力発電所1号機(BWR、102.7万kW)を永久閉鎖した。

運転認可は今年の12月27日まで有効だが、使用済燃料の貯蔵プールがほぼ満杯で 同機の炉心から取り出すことが出来ない。そのため、同社は関係規則に則り、同機の安全系機器で保守点検作業を実施することで維持する方針だ。これらの保守点検作業は、運転認可の有効期限である6か月以内に完了することになっている。

台湾電力の発表によると、國聖1号機の閉鎖にともない、同社は火力発電所に派遣していた複数の保守点検チームを呼び戻しており、住民への安定的な電力供給を継続するため、デマンドレスポンス(電力需給のバランスをとるために、需要側の電力を制御調整すること)等の補助的サービスを今後も促進する。同社はまた、バックエンド問題には中央政府と地方政府、および地元住民が協力して対処していかねばならないと指摘。國聖1号機の使用済燃料は最終的に、発電所の敷地内外で乾式貯蔵する計画である。

同機を閉鎖した後、台湾電力では夏場にピークを迎える電力需要に、主に以下の3方策で対応する。

(1)同社の石炭火力発電所である協和4号機、林口3号機、興達2号機が保守点検作業を終えて電力供給を再開したほか、7月上旬以降は大林6号機などもこれに加わる予定。

(2)民間企業の新しい電源が次々と稼働を開始しており、嘉恵電力の新設発電所や台湾糖業公司の太陽光発電所などが送電網に接続された。台湾電力としても、7月中旬から下旬にかけて洋上風力発電ファームで発電の開始を目指す。

(3)補助的サービスを改善するため、周波数調整や需給バランシング等のデマンドレスポンスに加えて、民間セクターとの連携や長期的に継続しているエネルギー貯蔵施設の開発など、新たなエネルギーや資源開発への投資を継続する。

台湾電力はまた、関係規則に従って、3年前に國聖1号機の廃止措置計画を原子能委員会に提出した。同委がこれを2020年10月に承認したことから、台湾電力は廃止措置の環境影響評価書をとりまとめているところ。同委がこの評価書を審査し、無事に廃止措置許可を発給すれば、台湾電力は運転認可の満了とともに同機の廃炉作業を正式に開始する。

台湾では、民進党の蔡英文氏が2016年の総統選挙に勝利し、就任後まもなく脱原子力に向けたエネルギー政策を立案。立法院は2017年1月、「非核家園(原子力発電のないふるさと)」を2025年までに実現することを盛り込んだ電気事業法改正案を可決した。その後の2018年11月、全国規模で行われた公民投票により、「2025年までにすべての原子力発電所の運転を停止する」との条文は削除された。

しかし、行政院長は「2025年という期限は削除されたが、非核家園を目指すという目標は変わっていない」とコメント。翌月には台湾の商業炉として初めて、金山(第一)原子力発電所1号機(BWR、66.6万kW)で40年間の運転認可が満了し、永久閉鎖されたほか、同2号機(BWR、66.6万kW)も2019年7月に同様に閉鎖されている。

(参照資料:台湾電力の発表資料(中国語)、台湾原子能委員会の発表資料(中国語)、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの7月1日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)

 

cooperation