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米国で頓挫したAP1000建設計画用の機器、ウクライナで活用する可能性

08 Sep 2021

WH社が米国で保管しているAP1000機器の一部©Energoatom

ウクライナの原子力発電公社であるエネルゴアトム社は9月4日、ウェスチングハウス(WH)社が米サウスカロライナ州の倉庫で保管しているAP1000設計用の機器・設備を、フメルニツキ原子力発電所4号機(K4)に利用する計画があることを明らかにした。

同州では2017年7月、州営電力のサンティ・クーパー社とスキャナ社が共同出資するV.C.サマー原子力発電所2、3号機(各PWR、110万kW)建設計画が、WH社の倒産申請にともない頓挫した。同計画では2013年3月に2号機を本格着工した後、一部の機器・設備がすでに製造、設置済みとなっており、サンティ・クーパー社とWH社は2020年8月、これらの機器・設備の所有権について最終合意に達している。

エネルゴアトム社は今回の発表で、「同計画の機器を流用する」と明確に述べていないが、サンティ・クーパー社とWH社の合意文書では機器・設備の売却方針が明記されていることから、K4用に活用される可能性が高いと見られている。

エネルゴアトム社の幹部一行は8月末に米ワシントンD.C.を訪れ、WH製AP1000をウクライナで複数建設していくための独占契約をWH社と締結した。同社はその際、建設進捗率が28%で停止しているK4にもAP1000を採用して完成させる方針を示しており、米国訪問中に一行はサウスカロライナ州のWH社倉庫も視察した。エネルゴアトム社のP.コティン総裁代理はその際、「AP1000用に製造された主要な機器・設備を点検させてもらったが、これらはいつでも出荷できる状態だ」と指摘。重要機器の多くは保管に窒素が使われるなど状態が非常に良好で、原子力系については一式完全に揃っていることを確認したと述べた。

同総裁代理によると、これらの機器・設備を使えばK4の建設工期を大幅に短縮することが可能である。同機にAP1000を採用する計画については来週以降、エネルゴアトム社の幹部がウクライナの首都キエフで、WH社の代表と引き続き協議を行うとしている。

なお、サンティ・クーパー社とWH社の最終合意では、サマー2、3号機の非原子力関係機器はすべてサンティ・クーパー社が所有し、売却についても同社が責任を持つことになった。一方、原子力関係機器については、すでに設置済みだったものの90%をサンティ社の所有とし、残り10%をWH社の所有とした。これらは主に2号機用で、アキュムレータ・タンクや加圧器、原子炉圧力容器、蒸気発生器、タービン発電機などである。

未設置の主要な原子力関係機器については、両社が折半して所有する取り決めである。これには3号機用のアキュムレータ・タンク、制御棒駆動機構、燃料取り扱い装置、静的残留熱除去・熱交換器、原子炉圧力容器、蒸気発生器、計測制御(I&C)系、タービン発電機などが含まれる。WH社は原子力関係機器すべてについて、最大で5年にわたりマーケティングを実施する責任を負っている。

(参照資料:エネルゴアトム社、サンティ・クーパー社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの9月7日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)

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