2024年版「レッドブック」 十分なウラン資源が存在
28 Apr 2025
経済協力開発機構・原子力機関(OECD/NEA)と国際原子力機関(IAEA)は4月8日、世界48か国から提供された公式データ等に基づき、2023年時点の世界のウラン資源、ウラン探査、生産および需給状況をとりまとめた「2024年版 ウラン:資源・生産・需要」(Uranium 2024: Resources, Production and Demand:通称 「レッドブック」)を共同で刊行。2050年以降も世界のウラン需要を賄うのに十分な資源量が存在するとの認識を示す一方で、適正な価格で安定供給を確保するためには、新規の鉱山開発への巨額投資が必要であり、その実現には持続的で適切なウラン価格が不可欠と強調している。
レッドブックは、1965年からほぼ隔年で刊行されており今回で通算30冊目。ウランに関する世界的な参考文献として活用され、今年で60周年を迎える。2024年版には、各国のウラン探査、ウラン資源、生産および原子炉所要量など世界のウラン市場に関する最新のデータ・統計(2023年1月1日時点)をはじめ、2050年までの世界の原子力発電設備容量とウラン需給見通しが掲載されている。
これによると、世界の確認資源(鉱床の規模・品位・形状が明らかなもの)と推定資源(鉱床の規模・特性に関するデータが不十分なもの)を合わせた「既知資源量(発見済みの資源)」のうち、回収コストが260ドル/kgU未満の資源量は793万4,500トンU。直近の調査(2021年1月1日時点:791万7,500トンU、2019年1月1日時点:807万400トンU)とほぼ横ばいで、2023年時点の世界の原子力発電設備容量(3億9,400万kW)から計算すると、約130年分の十分な資源量が確保されていることになる。
一方、ウラン価格は、2011年の福島第一原子力発電所事故以降、10年にわたり低迷していたが、近年では世界的な原子力エネルギーへの関心の高まりや、ロシアによるウクライナ侵攻を背景とする地政学的リスクの上昇により、燃料供給確保への関心が再燃。こうした動きを受け、ウラン市場は2021年に回復基調に転じ、価格は1ポンド当たり30ドル(U3O8)だった2021年初頭から、2024年1月には同106ドルへと大幅に上昇している。
ウラン価格の上昇に伴い、生産拡大に向けた投資も活発化している。かつて価格の低迷や探査・開発の停滞により減少傾向にあったウラン関連投資は、2022年は世界全体で8億300万ドル(2020年比113%増)に回復。2023年の投資額もさらに増え、8億4,000万ドルに達したと見られている。
ウラン生産量についても、カナダやカザフスタンなどの主要生産国がこれまで、ウラン市場の低迷を受けて全体の生産量を制限していたが、2022年の世界のウラン生産量は合計4万9,490トンU(2020年比4%増)に増加。これは、運転中の商業用原子炉所要量(5万9,018トンU)の85%をカバーする規模で、不足分は、過去の在庫や再処理、解体核ウランなどの二次供給源で補っている。
レッドブックでは、こうした現状をふまえ、将来の需給バランスにも着目。世界の原子力発電設備容量は、2050年までに5億7,400万kW(低ケース[1]現在の市場や技術動向が継続し、原子力発電に影響する政策や規制の追加的な変更が殆どないと仮定。)~9億kW(高ケース[2] … Continue reading)に達すると見込んでおり、それにともなう原子炉所要量も約9万トンU~14万2,000トンUに達すると予測。特に、中国を中心とした東アジア地域での需要拡大が顕著になると予想している。
また、小型モジュール炉(SMR)の導入状況次第で、将来的なウラン需要の再評価が必要になる可能性にも言及。さらに、長期的には先進炉やクローズド燃料サイクルの実用化によって、原子力の持続可能性が高まり、ウラン資源の有効利用にもつながると展望している。そのほか、ブラックシェールなどの非在来型ウラン資源についても、新技術の進展によって活用の幅が広がる可能性があるとの見方を示している。