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Natrium初号機 エネルギー・アイランドに例外措置

26 May 2025

桜井久子

「Natrium」完成予想図 © TerraPower

米国の原子力開発ベンチャー企業であるテラパワー社は5月8日、ワイオミング州ケンメラーで自社が開発するNatrium炉について、米原子力規制委員会(NRC)がプロジェクト全体の建設許可申請の審査を継続する一方で、同社による「エネルギー・アイランド」の建設を可能にする例外措置を認めたことを明らかにした

テラパワー社のC. レベスクCEOは、「当社のNatrium炉の設計は、原子炉を発電設備から切り離す革新的なもの。今回のNRCの承認により、建設スケジュールの短縮と材料費の削減が可能になる。Natrium炉は増大するエネルギー需要に対応するために最速で展開でき、最も費用対効果の高いソリューションの1つだ。原子力部の建設許可申請でNRCと引き続き協力していく」と語った。

この例外措置の承認は、20249月のテラパワー社からの要請による。エネルギー・アイランド内の特別な取り扱いを必要としない、安全関連以外のすべての「構造物、システム、および部品」(SSC=Structures, Systems, and Components)を、連邦規則にある「建設」の適用範囲の定義から除外するもの。その後、NRCとテラパワー社間で協議が重ねられ、NRCNatrium炉のエネルギー・アイランドでの特定の活動は、公衆の健康と安全に過度のリスクをもたらすものではないと結論。掘削中の杭の打ち込み、地下準備、埋め戻し、コンクリートまたは擁壁の設置や、基礎の設置、または特別な取扱いを必要としないSSCの現場組立、架設、製造、または試験を進めることを認めた。なお、NRCはこの例外措置は最終的な原子炉の建設許可の発給を約束するものでないとし、テラパワー社も建設許可が後に却下される可能性を考慮して、SSCの設置をしていくとしている。

テラパワー社は、20243月にはNRC建設許可申請(CPAを行った。NRCとの間ではCPAおよびトピックレポートの提出に関して1年以上にわたるレビューが行われ、NRCは最近、レビューのスケジュールを前倒ししている。また、初号機建設サイトのある米ワイオミング州からは州レベルの建設許可を得ており、20246月に起工式を挙行、非原子力部の建設工事を開始した。「ニュークリア・アイランド」(原子力部)の着工は早くて2026年、送電開始は2030年を予定している。

Natrium
炉は、熔融塩ベースのエネルギー貯蔵システムを備えた34.5kWeのナトリウム冷却高速炉。貯蔵技術は、必要に応じてシステムの出力を50kWeに増強し、5時間半以上を維持することができる。これにより、Natrium炉は再生可能エネルギーとシームレスに統合され、テラパワー社はより迅速に費用対効果の高い電力網の脱炭素化を実現させたい考えだ。

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