UAE・ENEC 原子力拡大に向け韓米企業と連携強化
07 Aug 2025
アラブ首長国連邦(UAE)の首長国原子力会社(ENEC)は、エネルギー安全保障と持続可能性の強化を目的に、原子力発電の迅速な供給体制の構築に向け、国内外での投資、協力、展開の機会の拡大に注力している。こうした中、同社は、韓国ならびに米国の企業と相次いで覚書(MOU)を締結。UAEの総電力需要の25%を供給するバラカ原子力発電所(韓国製APR1400×4基)の建設・運転で得た知見を活用し、原子力をクリーンエネルギー戦略に取り込もうとする各国・企業への支援、協力体制を強化している。
韓・現代E&C、サムスンC&TとMOUを締結
ENEC社は7月28日、韓国の現代E&C(現代建設)社とグローバルな原子力事業における協力機会の模索を目的とした戦略的覚書(MOU)を締結した。現代E&C社はバラカ発電所の建設の主要請負業者で、同建設プロジェクトにおいて、独自のリスク管理と建設能力を実証済み。本MOU締結により、知見の共有、プロジェクト参加の共同評価、戦略的投資機会の評価を実施するほか、相互の関心分野を特定し、共同作業部会を設置。両国が原子力を含むエネルギー分野での将来の協力へのコミットメントを深める中、現代E&C社はバラカ・プロジェクトで培った信頼と経験を基盤に、戦略的パートナーとしての協力を拡大する計画だ。
翌29日には、ENEC社はサムスンC&T社(サムスン物産)とも、グローバル市場における原子力関連プロジェクトの共同開発を模索するMOUを締結。協力範囲は、米国における新設、運転再開、原子力インフラ関連の合併・買収(M&A)活動、原子力機器サプライヤーなどへの投資の検討が含まれている。さらに、小型モジュール炉(SMR)の共同開発と投資計画、原子力による水素製造の機会の評価、ルーマニアにおける原子力発電所の開発と資金調達に関する共同評価などが挙げられている。両社は、大型炉とSMR分野で築いてきた先進技術とグローバルネットワークを融合し、相乗効果をめざす。
なお、サムスンC&T社は、2025年4月にルーマニアにおけるチェルナボーダ原子力発電所1号機(CANDU炉、70.6万kWe)の改修契約を獲得したほか、同国南部のドイチェシュティ(Doicesti)における米ニュースケール社製のSMR建設プロジェクトの基本設計(Front-End Engineering Design:FEED)にも共同参画している。スウェーデンとエストニアにおいてもSMRプロジェクトに取り組んでいるところだ。
米ウェスチングハウス社とMOUを締結
ENEC社は米ウェスチングハウス(WE)社と7月25日、米国における高度な原子力技術の展開検討に向けたMOUを締結した。米政府はAIやテクノロジー分野の拡大などに伴う電力需要の増加に対応するため、2030年までに10基の大型炉の建設開始、2050年までに米国の原子力発電能力を4倍に拡大するという目標を掲げている。両社は、WE社のAP1000の展開加速を含む、米国の新規建設と再開プロジェクト、燃料サプライチェーンの協力、バラカ発電所へのWE社の運転・保守の支援拡大の可能性などについて検討していくことで合意した。
GVH社との連携、ENECの戦略推進
なおENEC社は今年5月、米GEベルノバ日立ニュークリアエナジー(GVH)社と、GVH社製のSMRであるBWRX-300の国際展開に向けて、包括的なロードマップの評価・策定で協力するMOUを締結している。同MOUは、ENEC社が次世代原子力技術の評価と潜在的な展開加速を目的に創設したADVANCEプログラムの一環。ENEC社は今回の一連のMOU締結により、国際的な原子力パートナーシップにおける役割を拡大し、原子力の成長を加速、世界の電力需要の高まりに応える戦略を推進したい考えだ。