原子力産業新聞

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英政府 プルトニウム処分技術開発に資金提供

03 Sep 2025

桜井久子

セラフィールド・サイトにおけるプルトニウム貯蔵施設  © NDA

英国の原子力廃止措置機関(NDA)は828日、民生用プルトニウムの処分を可能にする技術開発に向け、英政府が1.54億ポンド(約306億円)の資金を供給することを明らかにした

セラフィールド原子力施設に保管された、英国所有分の民生用の分離プルトニウムの無期限の長期保管による、将来世代への安全保障上のリスクと拡散の懸念を払しょくするため、政府は今年1月、NDAと協力し、その軍事への転用を防ぐために形態を固定化し、地中に最終処分する方針を発表している。英国の民生用の分離プルトニウムは、60年以上にもわたる原子力発電所の使用済み燃料の再処理から発生したもので、セラフィールド・サイトには約140トンの分離プルトニウムが規制要件に沿って貯蔵されている。

原子力発電所の使用済み燃料の再処理により発生したプルトニウムを、地層処分施設(GDF)での最終処分に適した形にし(固定化)、長期的な安全保障上のリスクの低減を決定したことで、その技術開発に伴い、主にカンブリア地方に100名の雇用創出をもたらすという。

5年間にわたるこの資金提供により、NDAはサプライチェーンのパートナーと協力し、セラフィールドに専門的な研究施設を設計・設置・運営。そこで専門家がプルトニウムを安定した形に固定化する技術を検証する。最初の2年間は、主に初期の研究開発に焦点を当て、すでに50名が従事しているという。

さらに、マンチェスター大学とシェフィールド大学との連携による「プルトニウム・セラミック学術拠点」を設立するため、500万ポンド(約10億円)予算のうち半額の250万ポンドを資金提供。同拠点はプルトニウムの固定化に係わる技術的な知見と人材を育成する中心的役割を担う。

NDAのD. ピーティCEOは、「我々は、すでに廃止措置や英国で最も危険な放射性物質の安全管理分野をリードしている。今回の政府からの資金提供により、プルトニウムを固定化する最先端の施設を建設し、世界トップレベルの専門性と能力も育成し、安全で恒久的な解決策を提供していく」と語った。M. シャンクス・エネルギー担当大臣は、「今回の技術開発に伴う100名の雇用に加え、プルトニウムの固定化プログラム全体では数千人の雇用を生み出し、数十億ポンド規模の投資が地域経済に貢献するだろう」とその経済的意義を強調した。

検討されているプルトニウムの固定化技術には2種類、セラミック状のペレットに加工し、廃棄専用の形にするDMOX(Disposal MOX)と高圧・高温で岩石状のセラミックに変えるHIP(熱間等方圧加圧)がある。これにより別用途への再利用や再加工は実質的に不可能となる。

固定化後のプルトニウムは、地層処分施設(GDF)に最終処分され、NDAの傘下にある原子力廃棄物サービス(NWS)が作業を主導する。今後、大規模なプルトニウム処分プログラムの承認が必要となるが、これには、セラフィールドでの核物質処理施設や中間貯蔵設備の建設が含まれ、地域にさらなる大規模投資と数千人規模の高スキルの雇用が数十年にわたって見込まれている。

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