米オクロ オーロラ発電所の起工式を開催
24 Sep 2025
米国で先進炉と燃料リサイクルの開発を進めているオクロ社は9月22日、アイダホ国立研究所(INL)サイトで、初となるオーロラ発電所(オーロラ-INL)の起工式を開催した。起工式には、D. バーガム内務長官、L. ゼルディン環境保護庁長官のほか、アイダホ州のB. リトル知事、米原子力規制委員会(NRC)のB. クロウェル委員、米エネルギー省(DOE)のM. ゴフ首席次官補代理らが出席した。
バーガム内務長官は、「オーロラ発電所は、クリーンかつ安価で信頼性の高い電力供給を可能にする。人工知能(AI)の進歩により電力需要が増加する中、そのニーズを満たし、世界のAI競争の最前線に留まり続けるために不可欠だ。トランプ大統領の『米国のエネルギー支配アジェンダ』下でイノベーションとエネルギー増産が実現する」と語った。
オーロラは、金属燃料を使用するナトリウム冷却高速炉のマイクロ炉で、出力は顧客のニーズに合わせて1.5万kWeと5万kWeのユニットで柔軟に調整。少なくとも20年間、燃料交換なしで熱電併給が可能である。1964年から1994年までアイダホ州で稼働した実験増殖炉Ⅱ(EBR-Ⅱ)の設計と運転をベースにしている。オクロ社は2019年にDOEからEBR-Ⅱから回収された燃料を割当てられ、INLのオーロラ燃料製造施設(A3F)で初期炉心の製造に向けて、DOE認可の4つのステップのうち2つを完了している。オーロラ-INLは、DOEが新たに設立した原子炉パイロットプログラムに参加。今年7月には、建設運転一括認可(COL)申請のフェーズ1に関する事前審査を完了し、年内にCOLの申請を予定している。
北米最大級の建設・エンジニアリング企業キウィット社の子会社であるキウィット ニュークリア ソリューションズ社は、2025年7月に発表されたマスター・サービス契約に基づき、発電所の設計、調達、建設をリード・コンストラクターとして支援。建設中に約370人の雇用と、発電所と燃料製造施設を運営する70〜80人の長期で高スキルの雇用創出が期待されているという。
テネシー州に燃料リサイクル施設の建設へ
オクロ社は9月4日、テネシー州オークリッジにあるオークリッジ・ヘリテージ・センターの約100 haの敷地に、総額16.8億ドルを投じて、先進燃料センターにおける第一フェーズとして燃料リサイクル施設を設計、建設、操業する計画を発表した。使用済み燃料を先進炉向けの燃料に変換し、国内に供給する。国内初となる民間資金による施設を建設し、コストの削減、高レベルの雇用の創出、持続的な燃料供給の確立を目指している。
オクロ社はテネシー峡谷開発公社(TVA)と共同で、同施設で電力会社の使用済み燃料をリサイクルし、将来、建設予定の発電所からTVAへの電力販売を評価する機会を模索している。米国の電力会社が最新の電気化学プロセスにより自社の使用済み燃料をリサイクルし、従来の負債を資源に変えることを模索する初の試みとなる。
オクロ社のJ. デウィットCEOは、「使用済み燃料を大規模にリサイクルすることで、廃棄物をギガワットの電力に変え、コストを削減。クリーンで信頼性が高く、手頃な価格の電力供給を支援するサプライチェーンを確立していく」と抱負を語った。同社は、同施設で使用済み燃料から燃料材料を回収し、オーロラ発電所のような高速炉用の金属燃料に加工。このプロセスにより、廃棄物量を削減し、より経済的でクリーンかつ効率的な廃棄を実現したい考えだ。同施設は、規制当局による承認を経て、2030年代初めまでに燃料生産を開始する計画である。
TVAのD. モールCEOは、「テネシー州は米国の原子力ルネサンスの中核。リー知事のリーダーシップの下、州はアメリカのエネルギーの未来を築く企業の誘致をリードしている。当社は、AIインフラを強化し、経済成長を促進するために必要な次世代の原子力技術を開発するオクロ社の取組みを支援していく」と語った。
オクロ社によると、全国の発電所サイトに保管されている94,000トン以上の使用済み燃料に含まれるリサイクル可能な燃料から得られるエネルギーは、約1.3兆バレルの石油、サウジアラビアの原油埋蔵量の5倍に相当。今年5月の大統領令は、規制の近代化、原子炉試験の合理化、国家安全保障のための原子炉の配備、原子力産業基盤の強化など、原子力の新たな方向性を示しており、オークリッジはそれに従っているという。
テネシー州には原子力研究および教育プログラムの開発を支援する原子力基金があり、オクロ社はそれを利用する5番目の原子力関連企業だという。