原子力産業新聞

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IAEAが2050年の原子力予測発表 ―― 5年連続で予測を上方修正

26 Sep 2025

大野 薫

©IAEA

国際原子力機関(IAEA)915日、世界の原子力発電の中長期的な傾向を分析した最新報告書「2050年までの世界のエネルギー・電力・原子力発電予測」(第45版)を公表し、5年連続で原子力発電の見通しを上方修正した。IAEAR. グロッシー事務局長は「年次予測が着実に増加していることは、原子力が不可欠であるという世界的な合意が高まりつつあることの証左」としたうえで、「原子力はすべての人々にとって、クリーンで信頼性が高く、持続可能なエネルギーを実現するために不可欠」と強調している。

新たな見通しによると、高予測ケースでは、世界の原子力発電設備容量は2024年末時点の37,700kWeから2050年までに99,200kWe2.6倍に増加する見通し。一方、低予測ケースでも約50%増の56,100kWeに達すると予想されている。

IAEAは、2011年の福島第一原子力発電所事故以降初めて2021年に年次予測を上方修正、それ以降、高予測ケースにおける原子力発電設備容量の見通しは、2021年の79,200kWeから25%増加している。また近年、注目を集める小型モジュール炉(SMR)については、2050年までに高予測ケースでは今後追加される設備容量のうちの24%(67,600kWe)、低予測ケースでは5%(32,000kWe)を占めると見込まれている。

IAEAによると、近年では多国間開発銀行などの金融機関や大手テクノロジー企業の間で、SMRを含む原子力支援への関心が高まっている。これらの多くは、202312月のCOP28で発表された「原子力3倍化宣言」を支持しており、さらに世界銀行を含む多国間開発銀行との原子力政策に関する関与が、前向きな変化をもたらしているとIAEAは分析している。

IAEAはまた、現在運転中の原子力発電所の約3分の230年以上、約40%が40年以上運転している現状をふまえ、今後多くの新規建設が必要になると分析。また新規建設に加え、既存炉の運転期間延長が重要になるとも強調している。IAEAによると、既存炉の運転期間延長は、低排出電力のうち最も費用対効果の高い方法であり、大規模な原子力発電プラントを有する複数の国や地域で、運転期間延長を支援するための取組みが進行中である。さらに、長期運転に向けた経年化管理プログラムの実施例も増えているほか、自由化された電力市場での既存炉の競争力を支援する、新たな政策措置も導入されつつあるとした。

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