米「マンハッタン計画」跡地にマイクロ炉製造工場
23 Oct 2025
米国の原子力スタートアップ、ラディアント(Radiant)社は10月13日、テネシー州オークリッジにマイクロ炉「Kaleidos」の製造工場を建設すると発表した。建設地はかつての米国の原子爆弾開発計画「マンハッタン計画」跡地で、現在は原子力研究施設が集まる場所として知られる。
建設費は約2億8,000万ドル(約420億円)で、操業時は約175人の常時雇用が見込まれる。テネシー州はB.リー知事のもと2023年に「原子力基金」を創設し原子力関連企業の誘致や研究機関による人材育成を支援しており、ラディアント社はこの基金から200万ドル(約4億円)の助成を受ける予定。製造工場「R-50」の着工は2026年初頭、2028年にKaleidosの初号機納入、その後は年間12基の量産体制を構築し、長期的には年間最大50基の製造を目標としている。
ラディアント社の最高執行責任者(COO)、T.シヴァナンダン氏は「州の規制上の確実性や優秀な労働力を考慮し、オークリッジを選んだ」と説明。同社は当初ワイオミング州での建設も検討していたが、規制環境を理由にテネシー州を選定した。
ラディアント社は米スペースX社でロケットの電気系統設計担当エンジニアだったD.ベルナウアー氏により2020年に設立された。開発中のKaleidosは電気出力約0.12万kWのヘリウム冷却マイクロ炉で、TRISO燃料(3重被覆層・燃料粒子)を採用、運転サイクルは5年を想定。トラックなどによる輸送を可能にし、ディーゼル発電機の代替を目指している。
Kaleidosは、2025年8月に米国エネルギー省(DOE)が開始した「原子力パイロットプログラム」で選定された先進炉11炉型のうちの1つ。プログラムへの参加により、DOEの技術・安全審査を経て迅速な実証ルートを確保している。2026年春にはアイダホ国立研究所(INL)で試験運転を行い、2028年の実用化を目指す。ヘリウム冷却システムの商用規模での信頼性は実証段階にあり、試験結果が今後の展開を左右する重要な節目となる見通しだ。
同社は2025年7月、米空軍向けKaleidosの納入契約を締結し、2028年の引き渡しを予定している。このほか、遠隔地施設や災害対応電源などへの供給も見据え、分散型エネルギー市場での事業拡大を狙っている。





