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欧州投資銀行 フィンランドのオルキルオト改修に融資

14 Nov 2025

桜井久子

オルキルオト原子力発電所。向かって右から2号機、1号機、3号機(EPR)  © TVO

欧州投資銀行(EIB)は1030日、フィンランドで原子力発電所を運転するティオリスーデン・ボイマ(TVO)社とオルキルオト1-2号機(BWR、各92kWe)のバックフィット作業に向け、9,000万ユーロ(約162億円)相当の長期融資契約を締結した。今回のバックフィットでは、複数年にわたり、自動制御系のアップグレード、ならびに同1-2号機の原子炉気水分離器の交換を実施する。

1号機は1979年、2号機は1982年に営業運転を開始。当初の計画運転期間は40年間だったが、両機とも20189月に、203812月末まで20年間の運転期間延長を認可されている。今回のバックフィット作業により、TVO社はさらに2048年または2058年までの運転期間延長と、出力(ネット値)を現状の89kWeから97kWeへの増強を想定している。

EIBは本プロジェクトについて、フィンランドのエネルギー自立を高め、大規模な低炭素電源を支援するという融資政策と合致すると評価。欧州連合(EU)の気候目標に貢献するものとして位置づける。EIBK. ネハンマー副総裁も、「オルキルオト発電所の安全性向上を後押しすることで、フィンランドが信頼性の高い低炭素電源により、エネルギーミックスを強化するのを支援する」と語った。

一方、TVOL. ピエッカリ財務担当上級副社長は、「EIBからの長期資金調達は、資本市場ベースの債務調達を補完する優れた手段」と評価。借り手の資金源の多様化に資するとともに、プロジェクトの実行可能性に対する信頼を示すものとして、地元の資金調達市場への好影響に期待を示した。

本プロジェクトの総費用は1.9億ユーロ(約342億円)と見込まれ、今年4月、TVO社は北欧投資銀行(NIB)と7,500万ユーロ(約135億円)の長期融資を受けている。同社は2016年にも、EIB1億ユーロの長期融資を受け、非常用ディーゼル発電機や原子炉内部ポンプの交換、緊急給水システムの新設導入など、安全性向上対策を実施した。

オルキルオト発電所では1-2号機のほか、3号機(EPR166kWe)が20235月より営業運転を開始。2024年にはフィンランドの総発電電力量830kWhの約28%を占める、同国最大の発電所。TVO社は欧州の原子力運転事業者の中でグリーンボンドを発行した最初の企業の一つである。なお同国には、オルキルオト発電所の他、フォータム社のロビーサ発電所(VVER-440×2基、各53.1kWe)が稼働しており、両発電所による発電量のシェアは、約40%に達する。

ElBは、加盟国が出資する欧州連合の長期融資機関。気候変動対策と環境、デジタル化と技術革新、安全保障と防衛、農業とバイオ経済、社会インフラなど、EUの政策目標に貢献する投資に資金提供する。欧州投資基金(EIF)を含むEIBグループは、2024年に900件を超える大規模プロジェクトに対する約890億ユーロの新規融資に署名し、欧州の競争力と安全保障の強化に貢献している。

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