原子力産業新聞

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欧州委員会 ポーランド初の原子力発電所建設プロジェクトを承認

23 Dec 2025

桜井久子

第1原子力発電所の完成予想図 © PEJ

欧州委員会(EC)は129日、ポーランド初の原子力発電所導入プロジェクトへの同国政府による、国家補助を承認した。同プロジェクトの総投資額は名目ベースで約420億ユーロ(約777億円)と見積もられ、ポーランドのエネルギー分野における史上最大の投資案件であると同時に、欧州連合史上最大級の国家補助対象の1つでもある。

ポーランド初となる原子力発電所は、同国北部のポモージェ県ホチェボ自治体内のルビアトボコパリノ・サイトで、米ウェスチングハウス(WE)社製AP1000125kWe)×3基で構成。2030年代後半に運転を開始する予定である。ポーランド政府はECに対し20249月に、同プロジェクトの建設および運転の実施主体となる国有特別目的会社(SPV)のPEJを支援する計画を通知。ECは同年12月に正式な調査を開始した。EUでは加盟国による特定の企業に対する国家補助は域内競争を不当に歪める可能性があるとして原則禁止されており、一定の条件を満たす場合にのみ、ECの承認を受けた上で例外的に認められている。ECは12か月足らずで国家補助を承認したが、ポーランド政府とECの迅速で建設的な協力の結果、これまでの同様の調査と比べてほぼ半分の期間であるという。

なお、プロジェクト支援メカニズムは、主に以下の3つから構成される。

  • プロジェクト費用の約30%をカバーする国による投資家(ポーランド原子力発電会社: PEJ)への資本出資
  • 国による融資保証(保証料は無料、債務融資の100%をカバー)
  • 発電所稼働段階における差金決済契約(CfD

ポーランド政府はECの懸念に応え、国内市場での競争を過度に歪めないようにCfDの条件を調整。契約期間を発電所の運転予定期間の60年から借金返済期間の40年に短縮し、電力購入契約(PPA)や相対による長期売電契約(フォワード取引)の取引価格をすべてCfDの精算対象に含めることで、過剰補助を防ぐこととした。また経済的・技術的に合理性があれば、柔軟な出力調整運転を行うこととし、発電量の最大30%はPPAオークションで、残り70%を取引所(電力市場)で販売し、透明性を確保する。なお、ECが検証した財務モデルは、ストライクプラス(権利行使価格)が1MWhあたり500ズロチ(約22,000円)以下と仮定している。

今回のECの承認を受け、今後は国の予算からPEJへの資金移転、米WE社とベクテル社のコンソーシアムとの建設契約の締結が行われる。

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