フランス 原子力重視のエネルギー計画を発表
02 Mar 2026
フランス政府は2月12日、第3次エネルギー複数年計画(PPE3:2026〜2035年)の政令を発表した。PPE3は、原子力比率引き下げ方針を事実上撤回し、既存炉の長期運転と新設を軸に据える戦略へと大きく舵を切った点が最大の特徴だ。
PPEは、2015年8月のエネルギー転換法の制定を受け、今後10年のエネルギー政策や戦略的優先事項・施策を規定するもの。PPE3は、2022年から開始された国会・地方議員との長期間の協議、2025年春の国会討議に加え、2025年12月に送電系統運用者RTEが公表した将来シナリオなどに基づき策定された。脱炭素化され、主権的かつ競争力のあるエネルギーシステムを構築するため、2035年までに電力生産を拡大する計画を通じ、2050年までのカーボンニュートラル達成への道筋を示すものである
電力生産と脱炭素目標については、
- 2035年の脱炭素電力生産目標を6,500億〜6,930億kWh(2023年は4,580億kWh)
- 化石燃料由来のエネルギー消費を2035年には約3,300億kWeまで削減する(2023年は約9,000億kWh)
- 2030年にエネルギーの60%を脱炭素化、2035年には70%に
を掲げている。この目標達成には、大幅な電化も不可欠であり、産業、建築、輸送、デジタル分野を支援するため、政府は国家電化計画を始動。原子力と再生可能エネルギーを組み合わせた、バランスの取れたエネルギーミックスをめざすとしている。なお、エネルギー施設の設置、生産、送電網への接続および配電に関連する総コストを考慮に入れたコスト管理の徹底と、エネルギー主権に根差した、バリューチェーンの確保および欧州内での一体管理のため、欧州製の設備に基づく生産方式の優先を強調している。
前回の第2次PPE(2019~2028年対象)では、再生可能エネルギーの大幅な導入と並行して、原子力依存度の引き下げが柱とされた。2035年までに原子力比率を当時の71%から50%へ低減する方針を掲げ、90万kW級原子炉14基の閉鎖を想定。最も古いフェッセンハイム発電所の2基は2020年に閉鎖された。
今回のPPE3では、原子力重視への明確な転換が示され、原子力発電量目標(2030〜2035年)を3,800億〜4,200億kWh/年(2023年の3,200億kWhに対して)としている。フランス電力(EDF)は2月20日、今後数年の原子力発電量の展望として、2026~2027年に3,500〜3,700億kWh、2028年には3,450〜3,750億kWhと示している。
また、PPE3では、
- 既存原子炉の運転期間延長:50年または60年
- EPR2×6基建設(初号機は2038年に稼働開始)
- 追加8基の建設判断を2026年に実施
- 2030年代初頭に小型モジュール炉(SMR)初号機の着工
- 燃料サイクルのバックエンド事業の施設更新目標の具体化
を掲げ、原子力分野への政策的コミットメントを示した。また、PPE2では原子炉14基の閉鎖方針を示していたが、新規建設と既存炉の運転期間延長の方針を明確にした。
再生可能エネルギーについては、水力発電への投資の再活性化、洋上風力発電の加速、および陸上の再生可能エネルギー(太陽光、風力発電)の開発を合理的かつ現実的に推進。電化が困難なエネルギー部門については、バイオメタン、水素、再生可能熱、バイオ燃料などの脱炭素代替エネルギーの利用を推進するとしている。また政府は、再生可能エネルギーへの支援を最適化し、総コストを削減。平均的な電気料金に関するモデルにおいて再生可能エネルギー支援の国家負担額が約半減すると予測している。
さらに政府はPPE3の実施により、年間約600億ユーロに及ぶ化石燃料(石油とガス)の輸入依存を低減、2030年までに12万人以上の新規雇用創出(特に原子力、太陽光発電、洋上風力発電分野で顕著)などの経済・雇用効果を見込んでいる。
原子力産業界は、電力システムのバランスを考慮した可視性のあるPPE3を高く評価し、原子力産業の持続可能性と発展に対する国の強力な支援を歓迎した。EDFは、EPR2建設、既存炉の運転期間延長、水力発電への投資の再活性化を進めるとともに、再生可能エネルギー分野、とりわけ洋上風力における技術と専門性を維持していくとし、オラノ社は、燃料サイクル全体における長期的な投資の見通しを評価している。





