【第59回原産年次大会】OECD/NEAと初共催 人材戦略を議論
14 Apr 2026
「第59回原産年次大会」が4月14日、東京国際フォーラムで開幕。国内外より約850名が参加した。15日までの2日間、「原子力の最大限活用を支える人材戦略」を基調テーマに議論が進められる。同⼤会は、人材問題に焦点を当てると同時に、初めて経済協力開発機構/原子力機関(OECD/NEA)と共催し、広く国際的な視点を交えつつ、⼈材確保・育成の現状と課題、そしてその解決に向けた産学官の連携について議論を深める。
冒頭、挨拶に立った日本原子力産業協会の三村明夫会長は、足元の中東情勢の緊迫化について言及し、エネルギー供給リスクが顕在化した際に、社会や経済への影響の大きさが改めて浮き彫りになったと指摘。三村会長は、原子力について「国内におよそ3年分の燃料を保有するなど、高い安定供給性と自律性を有する準国産エネルギーであり、天候に左右されない脱炭素電源」と位置付け、その重要性を改めて強調した。また、欧州においても原子力回帰の動きが見られることから、「原子力からの転換は戦略的誤りだった」との認識や、「原子力三倍化」宣言に象徴されるように新増設の動きが加速していると紹介した。
また、国内動向については、柏崎刈羽6号機(ABWR、135.6万kWe)の営業運転再開や、泊3号機(PWR、91.2万kWe)の再稼働に向けた動きについて言及。さらなる人材確保に向けて具体的な取り組みが広がっているとした一方で、これらを支える事業環境の整備が急務であるとの認識を示した。
こうした状況を踏まえ、本大会の基調テーマを「原子力の最大限活用を支える人材戦略」とした理由について三村会長は「人材の確保と育成こそが今後の原子力政策実現に向けた最大のボトルネックとなりうる」との強い危機感があるためだと説明。人口減少に伴う労働力不足が見込まれる中で、革新炉の開発や既設炉の長期運転、廃炉、バックエンドといった多様な分野で担うべき業務が拡大していく構造にあると指摘した。
続いて、小森卓郎経済産業大臣政務官が登壇。小森政務官はまず、先月、東日本大震災から15年を迎えたことに触れ、福島第一原子力発電所の事故の経験や教訓を「エネルギー政策の原点」と位置付けた上で、「反省と教訓をひとときも忘れず、安全性向上に向けた不断の改善を重ね、国民の信頼を着実に積み重ねていくことが重要」と強調した。
そして、高市内閣の手掛ける成長戦略においても、次世代革新炉やフュージョンエネルギーが中核に位置付けられているとし、今後は設備投資や研究開発を含めた官民の積極的な投資を引き出していく考えを示した。
小森政務官は最後に、本大会のテーマである人材戦略について、「震災以降、原子力を支える人材基盤は弱体化している」との認識を示した上で、「原子力産業基盤を支える人材構造を持続可能な形へ再構築する転換期にある」と強調。「国として原子力政策を全力で前に進めていく」と述べるとともに、本大会が今後の人材育成の在り方に関する議論の深化につながることへの期待を示し、挨拶を締めくくった。
続く基調講演では、OECD/NEAのW.D.マグウッド事務局⻑が登壇し、原子力を取り巻く国際的な動向と人材課題について講演した。
まず、マグウッド事務局長は「OECD/NEAが65年の歴史を有する中で、現在ほど特別な時代はない」と述べ、世界的に「新たな原子力時代」が到来しつつあるとの認識を示した。
その背景として、電力需要の増加やエネルギー安全保障の強化、化石燃料依存の低減といった複合的な要因を挙げ、「多くの国で原子力の位置付けが再評価されている」と指摘した。OECD諸国に加え、グローバルサウスを含む各国で原子力発電の導入・拡大を志向する動きが広がる中、各国に共通する認識として、信頼性の高い電力へのアクセスが経済成長の成否を左右する重要な要素であると強調。安定的かつ適正なコストで電力を確保できるか否かが、国家の経済基盤を大きく左右するとの見方を示した。
その上で事務局長は、企業経営者、金融関係者らを集めた会合を通じ、資金調達やサプライチェーンといった「具体的な課題とその解決策について議論を進めている」と言及。原子力発電コストの不確実性やSMRの経済性の不透明さを背景に資金調達の難しさを指摘した。そして事務局長は、原子力の将来を左右する最大の鍵は「人材である」と強調した。
このため、教育や情報発信の重要性が一層高まっているとし、OECD/NEAで手掛けている若手人材育成プログラムを通じて、次世代の担い手確保に取り組んでいることを紹介した。
続く特別講演では、日本原子力産業協会の三村会長が再登壇し、日本が直面する構造的課題である人口減少問題について講演した。
会長は、人口減少の深刻な実態と社会経済への影響、対応の方向性を示した。同氏が議長を務める民間組織「未来を選択する会議」の活動を紹介しつつ、現状のまま推移すれば2100年には総人口が現在の約1億2400万人から約6300万人へ半減し、高齢化率も40%に達するとの見通しを提示。その上で、従来の少子化対策の限界を指摘し、「危機意識の共有」を前提に、人口減少の緩和を図る「定常化戦略」と、生産性向上を軸とする「強靭化戦略」を一体的に進める必要性を強調した。
最後に原子力委員会の上坂充委員長が登壇。「国際的視点に立った日本の原子力人材育成」と題し、原子力人材育成における日米欧の高等教育システムの比較、国際標準に基づく人材育成のあり方について講演した。欧米では修士段階で体系的な講義・演習が重視される一方、日本では専門教育の強化に課題があると指摘。米国や欧州の教育手法・制度の詳細を紹介したほか、東京大学原子力専攻専門職大学院やIAEAの国際原子力マネジメントアカデミーを例に、実務と連動した教育や国際連携について紹介した。加えて、中高生段階からの教育の重要性にも触れ、大学における魅力ある研究の推進と併せて、若年層の関心喚起を図る必要性を指摘した。





