米原子燃料供給網の国内整備に最大1700億ドル マッキンゼー試算
19 May 2026
米コンサルティング大手のマッキンゼー社は5月4日、米国の原子燃料サプライチェーンの国内整備に関する報告書を公表した。米国が2050年までに原子力発電設備容量を現在の約1億kWから約4億kWへ拡大し、原子燃料供給網を全面的に国内で整備した場合、サプライチェーン全体で最大1,700億ドル(約25兆円)の投資が必要になると試算した。
報告書では、連邦政府が掲げる2050年時点での原子力発電設備容量4億kW規模の実現を前提に、①採掘・精錬、②転換、③濃縮、④燃料製造、⑤再処理――の各工程について必要投資額を分析。100%国産化は、投資規模を試算するための仮定上のケースであり、実際の達成可能性を前提としたものではないとしている。投資額の内訳では、転換に300億~450億ドル(約4.4兆~6.5兆円)、濃縮に300億~400億ドル(約4.4兆~5.8兆円)を見込み、この2工程だけで全体の過半を占める。
各工程では、供給力の不足や設備制約が課題となっている。採掘・精錬分野では、米国のウラン需要に占める国内鉱山からの供給は1%未満にすぎない。転換分野では、国内で稼働する施設はコンバーダイン社が運営するイリノイ州メトロポリスの1か所のみで、現在の国内需要の約半分を賄う能力にとどまっている。
濃縮分野では、2023年時点で需要の27%をロシアからの供給に依存しており、米エネルギー省(DOE)は2026年1月、アメリカン・セントリフュージ・オペレーティング社、ゼネラル・マター社、オラノ社の3社に総額27億ドル(約4,000億円)を助成し、ウラン濃縮能力の拡充を支援している。ただ、報告書は、これらの計画が実現しても国内供給だけで需要を満たすことは難しく、海外への依存が当面続くとみている。
燃料製造分野では、TRISO燃料や金属燃料など、先進炉向けの新たな燃料形態への対応が課題と指摘。高温ガス炉や溶融塩炉などの次世代炉が新設容量の20%を占めると仮定した場合、100億~200億ドル(約1.5兆~2.9兆円)の投資が必要になると試算している。また米国は、使用済み燃料を直接処分するワンススルー方式を採用しており、現在では商業用再処理は行っていない。再処理を導入すれば輸入依存の低減につながる可能性があるが、既存の使用済み燃料を含めた処理には200億~450億ドル(約2.9兆~6.5兆円)の投資が必要と見込まれる。
報告書は、政策対応として許認可手続きの効率化、海外ウラン資産への投資、長期供給契約による需要確保、レーザー濃縮や再処理など次世代技術への研究開発投資などを提言した。また、各工程の整備には許認可や建設に長期間を要することから、早期の投資判断が重要になると指摘している。





