原子力産業新聞

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電中研 8年ぶりPRAシンポ開催 発電所の安全性向上へ活用

07 Oct 2026

佐藤敦子

NRRCシンポジウム2026(9月30日、東京都内)

電力中央研究所の原子力リスク研究センター(NRRC)は9月30日、東京都内の大手町三井ホールで「NRRCシンポジウム2026」を開催した。「PRA技術水準の到達点」をテーマに、確率論的リスク評価(PRA-Probabilistic Risk Assessment)の技術開発や原子力発電所の安全性向上に向けたリスク情報活用の成果、今後の課題を報告した。 

NRRCは、原子力事業者の自主的な安全性向上を支える研究開発拠点として、2014年に設立された。シンポジウムの開催は2018年以来8年ぶり、3回目。 

PRAは、原子炉を「止める・冷やす・閉じ込める」といった安全機能が失われ、事故に至るさまざまなシナリオを洗い出し、その発生頻度や影響を定量的に評価する手法。得られたリスク情報を、従来の安全性評価や運転経験などと組み合わせ、安全対策の優先順位の検討などに役立てる。国内では、福島第一原子力発電所事故の教訓をふまえ、規制や事業者による自主的な安全性向上活動への活用が進められてきた。 

基調報告でジョージ・アポストラキス同センター所長は、過去の国内PRAでは何を評価しても炉心損傷頻度(CDF)[1] … Continue readingが10⁻⁶と報告されてきた状況を「10⁻⁶の文化」と表現し、PRAへの信頼性の低下を招いたと指摘した。そのうえで、海外専門家によるレビューなどを通じた品質向上の取組みを紹介し、現実的にリスクを把握し、安全性向上に生かす重要性を強調した。米国では、内的事象[2] … Continue readingによるCDFの業界平均が1992年比で2023年ごろには約20分の1に低下したと説明。保全規則や設備対策などの要因もあるとしつつ、主にリスク情報の活用の成果との見方を示した。 

また、原子力規制庁の古金谷敏之・核物質・放射線総括審議官は、事前収録の基調講演で、運転中保全(オンラインメンテナンス)の現場実証など、リスク情報を活用した規制の取組みを紹介した。 

NRRC担当者による報告では、「現状の到達点」として、発電所の実態をより正確に反映する評価手法の開発成果が紹介された。地震PRAでは、従来、地盤が損傷すればただちに炉心損傷に至るものとして評価していた。これを改良し、地盤の変形が建屋や機器にどう影響するかまで評価することで、重要な事故シナリオをより的確に把握できることを確認した。津波PRAでは、実際の発電所の設備配置などを基に建屋内への浸水経路を詳しく分析し、浸水防護対策の効果を反映した評価が可能になったと報告した。 

「今後の開発」では、評価対象をさらに広げる取組みを紹介。竜巻PRAでは、風速や飛来物の衝突、防護設備の性能を評価する技術が整い、今後は実機情報に基づく試評価を進める段階にある。また、地震と津波が重なる場合や、複数号機で同時に事故が起きる場合など、福島第一原子力発電所事故の教訓を踏まえた評価手法の開発にも取組んでいる。 

閉会にあたり、同センターの朝岡善幸所長代理は、PRAで得られるリスク情報を安全性向上のための意思決定に活用できる段階に到達したとの認識を示した。今後は評価対象の範囲をさらに広げて手法開発を進めるとともに、得られたリスク情報を実際の安全性向上にどう生かすかが、一層重要になると締めくくった。 

脚注

脚注
↑1 炉心損傷頻度(CDF):機器の故障データなどから、炉心損傷に至る各事故シナリオの発生頻度を算出・合計した推定値で、実際の事故件数ではない。原子炉1基・1年当たりで表し、10⁻⁶/炉年は100万炉年当たり1回に相当する。
↑2 内的事象:機器の故障や運転員の操作ミスなど、発電所内部で生じる事故のきっかけとなる事象。地震・津波などの外部事象とは区別して評価される。 

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