原子力産業新聞

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増井理事長会見 原子力プラント1基の経済波及効果4.3兆円と試算

06 Oct 2026

深澤伊弦

増井秀企理事長

日本原子力産業協会の増井秀企理事長は10月2日の定例記者会見で、120万kW規模の原子力発電プラント1基の工事・運転・廃炉のライフサイクルを通じた経済波及効果を約4.3兆円と試算したことを明らかにした。原産協会がこうした試算を公表するのは今回が初。

増井理事長は会見冒頭で、原産協会が公表した資料「安全性を大前提とした、数字で示す!原子力発電プラント1基のさまざまな価値」を説明。政府が発表した今後の原子力政策の方向性と行動指針の中で、2040年代までに最大5基、2050年代までに最大14基の原子力発電所の建て替えが必要とされる中、原子力発電プラント1基の価値を3E[1]安定供給(Energy Security), 経済効果(Economic Efficiency), 環境への適合(Environment)の観点から整理したという。今回、初めての取組みとして公表した、経済波及効果は政府の2025年発電コスト検証ワーキングで用いられたデータや総務省の2020年版産業連関表[2]国内経済において一定期間(通常1年間)に行われた財・サービスの産業間取引を一つの行列(マトリックス)に示した統計表を用いて、直接効果と一次効果までを試算の対象とした。1基建て替えによるプラントライフサイクル全体の国内経済全体の波及効果の合計は4.3兆円、建設中には年間1.4万人の雇用が誘発されるとしめした。このほか、安定供給の観点から、機器類の国産化率90%以上、国内で保有する原子燃料で発電を維持できる期間を表す燃料備蓄効果が2.9年分、環境の観点から発電時のCO2排出量ゼロなどを説明した。また最も伝えたいメッセージとして、「原子力の利点は単なる経済波及効果だけでなく、安定的な供給と優れた環境適合性の上にさらに経済波及効果があるということ」を挙げた。

また、茨城県常陸大宮市での高レベル放射性廃棄物(HLW)の地層処分地選定に向けた文献調査受け入れ表明について言及。科学的に適した処分地を選定するためには全国の複数地点での調査が不可欠であり、今回の受け入れ表明によって調査地域が広がることは極めて意義が大きいとした。

記者からの質疑応答では、今回発表した原子力の経済波及効果に関する質問が相次いだ。資料で年間510~725億円としている化石燃料の削減コストについて、ホルムズ海峡をめぐる情勢の影響で足元のLNG価格が今回の算定根拠より上昇しているとの指摘に対し、増井理事長は、現在の価格を反映すると削減効果はさらに大きくなるとしつつ、今回は公的なデータを用い、効果を過大に見せることなく、化石燃料コストの削減という観点から原子力発電の価値をニュートラルに示すことを意図したと説明。さらに新設炉の経済効果試算について問われた際には、政府の発電コスト検証ワーキングで革新軽水炉の評価が行われた場合、改めて価値を試算する可能性があるものの、革新軽水炉は現時点で国内での建設実績がなく、検証が難しいと述べるにとどまった。

脚注

脚注
↑1 安定供給(Energy Security), 経済効果(Economic Efficiency), 環境への適合(Environment)
↑2 国内経済において一定期間(通常1年間)に行われた財・サービスの産業間取引を一つの行列(マトリックス)に示した統計表

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