原子力産業新聞

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文科省作業部会、原子力機構の中長期目標に関し原産協会他よりヒア

10 Feb 2021

山口主査「原子力機構は人材育成という非常に大きなミッションを担っている」と強調(オンライン中継)

文部科学省の原子力研究開発・基盤・人材作業部会(主査=山口彰・東京大学大学院工学系研究科教授)は2月10日、日本原子力研究開発機構の中長期事業目標(2015~21年度)の変更に関し、日本原子力産業協会と日本電機工業会よりヒアリングを行った。

中長期目標の変更は、独立行政法人の目標策定に関する政府指針の改訂などに伴うもので、新たな中長期目標案には、人材確保・育成やイノベーション創出に向けた取組が追加記載されている。同機構を所管する一行政庁として文科省は、同作業部会で9日の電気事業連合会、日本原子力学会、原子力規制庁に続きヒアリングを実施した。

10日の会合で、原産協会からは、人材育成部長の喜多智彦氏が産学官連携のプラットフォーム「原子力人材育成ネットワーク」の共同事務局を原子力機構とともに務める立場から説明。同氏は、研究開発と人材育成は「表裏一体」の関係にあるとし、効果的・効率的に進められるよう「協力と連携」をキーワードに掲げた。今後、革新炉・小型モジュール炉(SMR)などの研究開発に向け、「産官学連携研究開発プラットフォーム」のような仕組みが必要であるとし、原子力機構にその中核となる機能を期待。人材確保・育成の視点からは、同機構に対し、国際研修コースや学生実習などの取組に評価を示した上で、「大学との連携強化」、「技術系人材の確保・育成」、「長期的・継続的な人材・資金の投資」の重要性を述べた。

電機工業会からは原子力部長の小澤隆氏が説明。同氏は、プラントメーカーの立場から、原子力機構に対し、新型炉の早期実用化に向けた規制対応、高速炉サイクル開発に係る海外の政府・研究機関との協力、水素製造システムの実証が期待される高温ガス炉「HTTR」の早期稼働などを要望した。

原子力機構は、今後の人材育成・確保に関し、2月中にも見込まれる研究炉「JRR-3」の再稼働など、新規制基準対応より停止していた施設の再開を見据え、人・予算の1割程度増を目指していくとした。

原子力産業以外でも技術基盤の維持が困難となっている現状について、喜多氏が「産業間で技術系人材の奪い合いが起きている」と述べたのに対し、産業界での経験を踏まえ佐藤順一氏(科学技術振興機構研究開発戦略センター上席フェロー)は、「国として真剣に考える必要がある」などと、喫緊の課題であることを改めて強調。また、原子力科学技術に係る立場から矢野安重氏(仁科記念財団常務理事)は、加速器を利用した放射性廃棄物減容化の技術開発に期待を寄せるなどした。

科学技術行政に通じた寺井隆幸氏(東京大学名誉教授)は、2日間のヒアリングを振り返り、今後多分野にわたる原子力研究開発の方向性について改めて整理していく必要性を述べた。

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