原子力産業新聞

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「もんじゅ」サイトへの研究炉設置で検討開始

24 Mar 2021

廃止措置が進められている高速増殖原型炉「もんじゅ」のサイトに新たな研究炉を設置するため、概念設計や運営のあり方について検討する委員会が3月23日、福井大学(敦賀市)で初会合を行った(=写真、オンライン中継)。

昨秋、文部科学省の作業部会は、「もんじゅ」サイトの活用として、(1)西日本における原子力分野の研究開発・人材育成の中核的拠点にふさわしい機能の実現、(2)地元振興への貢献――の観点から最適なものとなるよう取り組むことを基本的考え方に、2020年度中の概念設計着手、2022年度中の詳細設計開始を目指し、中出力の研究炉(熱出力10MW未満程度、中性子ビーム研究を主目的)の設置検討を決定。概念設計や運営のあり方について検討する中核的機関として、日本原子力研究開発機構(代表機関、試験研究炉の設計・設置・運転)、京都大学(幅広い利用運営)、福井大学(地元関係機関との連携構築)を選定した。

今回の委員会は、中核的機関に加え、研究炉の利用ニーズを有する学術界、産業界、地元関係機関などからなる「コンソーシアム」(共同事業体)によるキックオフ会合として開催。会場とオンラインとの併用で行われた。開会に際し、文科省審議官(研究開発)の堀内義規氏は、国内で多くの研究炉が廃止に進む一方、2050年カーボンニュートラルの実現を目指すといった原子力利用を巡る状況を述べ、「人材確保は非常に重要」と強調。地元として、福井県地域戦略部長の前田洋一氏、敦賀市長の渕上隆信氏は、地域経済に与える効果からも研究炉の果たす役割の重要性を述べ、今後の委員会による議論に期待した。

新たな研究炉のイメージ(文科省発表資料より引用)

2月に原子力機構の研究炉「JRR-3」(東海村)が運転を再開したところだが、現在、西日本において原子力研究開発・人材育成の中心的な役割を有している京都大学研究炉「KUR」は、2026年以降の運転継続が困難な状況。同学複合原子力科学研究所所長の川端祐司氏は、新たな研究炉構想を踏まえ、「KUR」の経験に基づいた(1)利用分野の調査、(2)利用者のニーズ把握、(3)求められる要件の明確化――の方向性とともに、福井分室の新設など、2030年以降を見据えた将来目標・計画を披露した。

研究炉の中性子利用は、医療、工業他、多分野に応用されており、新たに設置する研究炉も、「JRR-3」や大強度陽子加速器施設「J-PARC」などと分担し効果的に運用していく必要がある。原産協会理事長の新井史朗氏は、新たな研究炉が半導体や医療用アイソトープの製造に活かされるとともに、若手への関心喚起や原子力の合理的な規制につながることを期待。地元企業として東洋紡総合研究所分析センターリーダーの船城健一氏は利便性を、近畿大学原子力研究所所長の山西弘城氏は研究炉建設に係わる人材育成を図っていく必要性をそれぞれ述べた。

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