原子力産業新聞

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総合エネ調・発電コスト検証WG、原子力について議論

12 Apr 2021

エネ研・松尾氏がまとめた再稼働プラント9基の稼働状況、2015年のコスト検証では設備利用率70%のモデルプラントを想定した(同氏発表資料より引用)

総合資源エネルギー調査会の発電コスト検証ワーキンググループ(座長=山地憲治・地球環境産業技術研究機構副理事長)は4月12日の会合で、火力と原子力について取り上げた。〈資料は こちら

同WGは2015年に15種類の電源について発電コストに係る試算をまとめているが、昨秋からのエネルギー基本計画見直しの本格化に伴い、3月末に約6年ぶりに再開。資源エネルギー庁は、前回会合で取り上げた再生可能エネルギーに続き、火力発電と原子力発電のコスト算定方法と必要となる各諸元を整理し、火力については、石炭、LNG、石油の他、CCS(CO2回収・貯留技術)付火力発電、水素、アンモニアに係るコスト試算の考え方を新たに示した。

原子力については、2015年の試算時に整理された考え方を踏襲した上で、(1)新規制基準への対応を踏まえた追加的安全対策、(2)事故リスク対応、(3)核燃料サイクル――に係る増額などを適切に反映することとしている。

委員からは、増井利彦氏(国立環境研究所社会システム領域室長)が、IEAの「ワールド・エナジー・アウトルック」が示すシナリオや米国の炭素の社会的費用評価(自動車の燃費規制など)を巡る動向を踏まえ、発電コストの検討におけるCO2対策費用の論点を提示。松尾雄司氏(日本エネルギー経済研究所研究主幹)は、OECD/NEAが試算した原子力発電所建設単価の各国比較を示した。松尾氏は、「継続的に原子力発電建設を進めてきた韓国やロシアにおいて建設単価は低い水準にある」としたほか、日本の再稼働プラントの設備利用率を示した上で、原子力発電の経済性維持のため、遅延のない建設の遂行と安定的な運用が必要なことを示唆。

また、高村ゆかり氏(東京大学未来ビジョン研究センター教授)は、日本原子力学会が昨夏取りまとめた福島第一原子力発電所廃炉に係るエンドステート(最終的状態)までを見通した報告書「国際標準からみた廃棄物管理」に触れ、事故廃炉費用について改めて精査する必要性を述べた。

これに対し、今回オブザーバーとして出席した原子力損害賠償・廃炉等支援機構理事長の山名元氏は、福島第一原子力発電所における燃料デブリ取り出し・廃棄物に関し、「工法によって発生量も大きく変わってくる。規制基準、社会的問題も含め、まったくの『白紙状態』」などと述べ、現状ではコスト算定に採り入れられる十分なデータは皆無であることを強調した。

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