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スロベニア唯一の原子力発電所で長期運転に向けたIAEA審査が完了

19 Oct 2021

クルスコ原子力発電所©NEK

国際原子力機関(IAEA)は10月15日、スロベニア唯一の原子力発電所であるクルスコ発電所(PWR、72.7万kW)で、今月4日から実施していた(長期運転の実施に先立つ事前の)長期運転安全評価(SALTO)が14日付で完了したと発表した。

1983年に営業運転を開始した同発電所では、2023年に営業運転開始後40年目を迎える。事業者のクルスコ原子力発電会社(NEK)は、国内総発電量の約三分の一を賄う同発電所の運転期間を、2043年まで20年延長することを計画。運転期間の長期化(LTO)に際しIAEAの安全基準を満たしているか、事前のSALTOチームによるレビューをIAEAに要請していた。

同チームはクルスコ発電所における準備活動について、「タイムリーに進められており、多くの経年化管理対策はすでにIAEAの安全基準を満たしている」と評価。同発電所に対しては、レビュー結果へのさらなる取り組みと、安全なLTOに向けて機器類の経年化管理レビューなど、改善が必要な部分の対策をすべて進めるよう奨励した。

米ウェスチングハウス(WH)社製のPWRである同発電所はスロベニア東部に位置しており、隣国クロアチアと共同で国営スロベニア電力(GENエネルギア社)が所有。同発電所の運転期間の20年延長に関しては、スロベニアの原子力安全規制当局がすでに2015年7月に承認している。

今回のIAEAの事前SALTOチームは、加盟6か国から来た専門家7名に3名のIAEAスタッフを加えた10人構成で、安全なLTOに向けた同発電所の準備状況や関係組織、プログラムなどを検証。その結果、同発電所で行われている良慣行や、世界中の原子力産業界がシェアすべき良好実績を次のように指摘した。

・安全性に関わるケーブルの経年化管理で、先を見越した対応や状況に応じた活動を実施する際、しっかりした構成の包括的プログラムが使われている。

・発電所内に効率的な企業内ネットワークが構築されており、すべての従業員が管理アプリや関係するプログラム、文書、手順書、データ・記録等を利用することができる。

・発電所の蒸気発生器(SG)経年化管理プログラムによって、国際的な安全基準を凌ぐ卓越した管理活動が行われている。

一方、以下の点については、IAEAチームはLTOの準備活動をさらに改善して進めることを勧告した。

・2022年に実施予定の大規模安全審査に向け、綿密な管理計画を立てる。

・所内のシステムや構造物、機器類の経年化管理レビューを完了させる。

・LTOを補助する活動として、効果的な知識管理対策を実施する。

なお、GENエネルギア社は今年7月、同発電所で2基目の原子炉を建設する計画(JEK2プロジェクト)の実施に向け、準備作業を開始した。これは同プロジェクトの実行可能性調査(FS)の結果に基づき、スロベニア政府のインフラ省が「エネルギー(事業)許可」をGENエネルギア社に発給したことによるが、この許可により2号機の建設が決定したわけではない。同社によると、FSではスロベニアが将来的に低炭素な電力への移行を効率的に果たし、2050年までにCO2排出量の実質ゼロ化を達成する上で、プロジェクトの実施は必要との結論が示されている。

(参照資料:IAEAの発表資料、NEKの発表資料(スロベニア語)、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの10月18日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)

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