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ロシアでRBMKのクルスク1号機が永久閉鎖

27 Dec 2021

クルスク1号機を停止する運転員 ©Rosenergoatom

ロシアの民生用原子力発電公社であるロスエネルゴアトム社は12月20日、モスクワの南約500kmに位置するクルスク原子力発電所で、約45年間稼働した1号機(100万kWの軽水冷却黒鉛減速炉=RBMK)を19日付で永久閉鎖したと発表した。

発表によると、同炉は1976年12月に送電開始して以降、2,510億kWh以上の電力を発電。これはクルスク地域における総電力消費量の約30年分に相当する。同発電所全体では、全4基のRBMKでこれまでに9,870億kWh発電したとしている。

これらの4基はすべて、1986年に事故を起こしたチェルノブイリ原子力発電所と同型の「RBMK-1000」設計であり、ロシア国内ではクルスク発電所のほかにもレニングラード、スモレンスクの両発電所で同じRBMKが稼働中。これらは今後10年以内に運転期間が満了するため、3つの発電所では現在、稼働しているⅠ期工事のリプレースとして最新鋭のロシア型PWR(VVER)をⅡ期工事で建設する計画が進められている。レニングラード発電所では、革新的技術を用いた第3世代+(プラス)の120万kW級VVER設計「AES-2006」がⅡ期工事1号機として2018年10月から、2号機については今年3月から営業運転を開始した。

クルスク原子力発電所では、「AES-2006」設計の技術面や経済面で一層の最適化が図られたという出力125.5万kWの「VVER-TOI」設計をⅡ期工事の1、2号機に採用、それぞれ2018年4月と2019年4月に本格着工した。VVER-TOIではAES-2006と同じく運転期間が60年に設定されているほか、受動的な安全システムを全面的に装備。コア・キャッチャーや、大気の自然循環で炉心を冷却する受動式残留熱除去装置が組み込まれている。

クルスクⅡ期工事1、2号機はVVER-TOIのパイロット・ユニットという位置づけであり、ロスエネルゴアトム社はⅠ期工事の4基の閉鎖時期に合わせてこれらの運転を開始すると表明。現時点でⅡ期工事1号機は2022年の後半に起動、同2号機については2024年8月に営業運転を開始すると見られている。VVER-TOI設計はまた、スモレンスク発電所のⅡ期工事、および新規サイトのニジェゴロドやセベルスク原子力発電所で採用が決定している。

(参照資料:ロスエネルゴアトム社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの12月21日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)

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