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英国政府、サイズウェルCの開発継続で1億ポンドの支援を約束

31 Jan 2022

サイズウェルC原子力発電所の完成予想図
©EDF Energy

英国のビジネス・エネルギー・産業戦略省(BEIS)は1月27日、イングランド南東部のサフォーク州でEDFエナジー社が計画しているサイズウェルC(SZC)原子力発電所開発プロジェクト(160万kWの欧州加圧水型炉:EPR×2基)を存続させるため、今年3月までの現行会計年度予算から1億ポンド(約155億円)の支援を提供すると発表した。

英国政府は昨年10月、大型原子力発電所を少なくとも1か所建設する計画について、現政権の在任期間中に最終投資判断(FID)が下されるよう、最大で17億ポンド(約2,600億円)を歳出すると表明した。その場合は費用対効果が高いことと関係承認が得られることが条件だが、BEISのK.クワルテング大臣は今回の新たな支援を通じて、さらなる民間投資が新しい原子力発電所の開発に呼び込まれると指摘。SZC発電所は完成すれば320万kWの電力を供給するが、これは約600万世帯が必要とする電力量に相当するほか、英国全土で1万人分の雇用を支援する。低炭素な電力が大規模かつ継続的に英国にもたらされ、高価格な天然ガスの影響を軽減、英国内で信頼性の高い安定的な低炭素エネルギーの供給を保証すると強調している。

EDFエナジー社はこの支援金を通じて、政府と昨年から実施している同プロジェクトの実施交渉を次の段階に進めるほか、国家的に重要なプロジェクトであるとの確信を投資家に最大限に与えることで、新たな民間投資を呼び込んでいく。今回の支援は、政府からの直接投資という形態を取っておらず、政府はSZC発電所の開発を担当するNNB GenCo社(EDFエナジー社の子会社)の一部株式、および建設用地の一部を統合オプションの形で購入。プロジェクトが最終的にうまく行かなくても、政府は同サイトで原子力に限らず、その他の低炭素な代替エネルギー・インフラを継続して開発できるよう機会を提供していく。

一方、SZC計画がFIDの段階に進展した場合、政府は同社から投資収益と1億ポンドの払い戻しを受けられるが、返金形態は現金かプロジェクト権益になる。また、プロジェクトがFIDに到達しなかった場合、政府はNNB GenCoの一部株式、あるいは建設用地の一部をEDFエナジー社に要求できるものの、政府の希望する形で同社が資産を提供できなければ、同社は投資収益と1億ポンドの現金を返済することになる。いずれにしても、英国政府は「現段階では、サイズウェルCプロジェクトへの投資構成は何も決まっていない」と表明している。

今回の政府発表は、大型原子力発電所の新規建設を支援する資金調達の枠組みとして、「規制資産ベース(RAB)モデル」の導入を目指した法案が議会で審議されている最中に行われた。BEISによると、RABモデルを導入することにより、大型原子力発電所の開発コストは、(ヒンクリーポイントC原子力発電所の建設計画で適用されている「差金決済取引(CfD)」との比較で)、一件あたり300億ポンド(約4兆6,500億円)の削減が可能だ。RABモデルはまた、年金基金など英国内の民間部門投資を幅広く呼び込むことになるため、中国広核集団有限公司(CGN)のように、英国の原子力発電開発プロジェクトに一定割合の資金提供を約束している海外デベロッパーへの依存が軽減されるとしている。

EDFエナジー社のS.ロッシCEOは今回、「英国政府がSZC計画の成功に自信を示してくれたことは本当に喜ばしい」とコメント。この方針が承認されれば、消費者が支払うエネルギー料金は大幅に削減され、英国は世界的に変動が激しい天然ガスの価格から影響を受けずに済む。この方針はまた、SZC計画がFID段階に進めるよう後押ししてくれると評価した。

英国原子力産業協会(NIA)のT.グレイトレックス理事長も、「政府の発表はSZCプロジェクトを前進させる大きな一歩になった」と表明した。同理事長によると、英国で現在稼働中の改良型ガス冷却炉(AGR)、および唯一の軽水炉であるサイズウェルB原子力発電所は、英国史上最も安価で生産的な低炭素発電資産であり、これまでに14億トンのCO2排出量を削減。現在の炭素価格にして、約1,100億ポンド(約17兆円)の税負担を抑制したことになると強調している。

(参照資料:BEISNIAの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの1月27日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)

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