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英会計検査院 SZCの費用負担リスクを指摘

01 Jun 2026

桜井久子

SZC完成予想図  © Sizewell C

英会計検査院(NAO)は520日、イングランド東部のサフォーク州で建設準備作業が進む、サイズウェルC原子力発電所(SZC)に関する報告書を公表した。SZCの資金調達・事業実施モデルについて、投資家のリスク負担が限定される一方、納税者と消費者がより多くのリスクを負う可能性があるとして、政府に厳格な監視を求めた。

SZCプロジェクトは、既存のサイズウェルB原子力発電所サイトに欧州加圧水型炉(EPR-1750、各172kWe)を2基建設する計画。現在、サマセット州で建設中のヒンクリーポイントCHPC)のEPR×2基のレプリカ版であり、HPCプロジェクトで得られた知見や教訓を活用し、建設遅延やコスト超過のリスク低減を目指している。

SZCプロジェクトは、20227月に開発合意書(DCO)、20233月に環境許可、20245月にはサイト許可がそれぞれ発給されており、英エネルギー安全保障・ネットゼロ省(DESNZ)は20257月、最終投資決定FID)を行った。英政府(44.9%)のほか、フランス電力(EDF, 12.5%)、カナダ・ケベック州の公的年金投資機関のラ・ケス(20%)、英エネルギー企業のセントリカ(15%)、英インフラ資産運用会社のアンバー・インフラストラクチャー(初期出資7.6%。後にDESNZから2.4%追加オプションあり)が出資する。

SZCプロジェクトは、公共投資と民間資本の両方を使用する規制資産ベース(RAB)モデル[1] … Continue readingを適用。建設期間中から需要家(消費者)がコストの一部を電気料金に上乗せされる仕組みで、HPCに適用された差金決済取引(CfD)とは異なる。CfDでは、開発者が建設費を負担し、発電開始後にあらかじめ定められた価格で収益を得る。

SZCプロジェクトの建設コストの見込額は382億ポンド(2024年価格ベース)と予測されており、2039年夏までに建設完了を予定。完成後は、60年間にわたり英国の600万戸分相当の電力供給が可能とされている。DESNZは、ネットゼロ達成のための他の電源と比べて電力システム全体のコストを下げられると主張している。一方、NAOは、同型炉で遅延やコスト超過なしに完成した例はまだないと指摘。HPCでは工期が7年遅れ、建設費も当初見込みの約2倍に膨らんでいることから、SZCにも重大な実施リスクが残るとした。

DESNZの試算では、SZC運用期間中に消費者に最大180億ポンドの純利益をもたらす可能性がある。ただしNAOは、少なくとも2064年以降にならないと発生しないと指摘。将来的には、他の代替のネットゼロ技術がより安価または優れている可能性もあり、SZCのコスト低減効果には大きな不確実性があるとした。

消費者は202511月からRABモデルのもとで電気料金を通じて建設費用の前払いを始めている。202526年度には1世帯あたりの負担増は年間約4ポンドとなり、2039年の完成予定までに年間1719ポンドに上昇する見通し。

NAOはまた、政府がSZCに資金の大部分を提供しているにもかかわらず、44.9%の少数株主にとどまり、プロジェクトへの管理権を意図的に限定している点にも着目した。DESNZは同プロジェクトが完全に政府管理下に置かれた場合、建設コストは規制の上限シナリオ(477億ポンド)に達し、民間投資家の関与により建設コストの削減と納期の迅速化が可能になると説明する。しかしNAOは、民間投資家の期待利回りが年10.813%程度とされ、投資家の財務リターンが消費者に4045億ポンドの負担をもたらすと指摘。投資家がその負担に見合うだけのコスト削減や工程短縮を実現できるかは不透明だとした。建設費が規制上限に近づいた場合でも、投資家は他の公益事業投資と同程度のリターンを得られる可能性があり、コスト抑制へのインセンティブがDESNZの想定どおりに働くかは明確でないとしている。

さらにNAOは、SZCの建設コストはHPCより安く抑えられるはずだが、HPCの電力価格はコスト超過(EDFが負担)前に設定されており、借入コストもそれ以降上昇しているため、消費者はより多くの電力料金を支払う可能性が高いと指摘した。

NAOのG. デービス長官は、SZCについて「安全で手頃なクリーン電力供給に向けた政府計画の重要な一部」と位置づけた上で、過去の原子力建設プロジェクトや大規模インフラ事業の教訓を踏まえた新たな資金調達構造であるからこそ、DESNZは納税者と電気料金負担者のリスクを厳格に監視する必要があると述べた。

 

脚注

脚注
1

規制資産ベース(RAB)のコスト回収スキーム。個別の投資プロジェクトに対し、総括原価方式による料金設定を通じて建設工事の初期段階から、需要家(消費者)から費用(投資)を回収する。これにより投資家のリスクを軽減でき、資本コスト、ひいては総費用を抑制することが可能になる。

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