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英国のHTGR開発で米X-エナジー社が英キャベンディッシュ社と協力

13 May 2022

©X-Energy, Cavendish Nuclear

米メリーランド州で次世代の原子力技術を開発しているX-エナジー社と、原子力発電所のあらゆる側面でサービスを提供している英国のキャベンディッシュ・ニュークリア社は5月11日、英国内でX-エナジー社製の高温ガス炉(HTGR)を建設するため、協力覚書を締結したと発表した。

X-エナジー社は現在、小型のペブルベッド式HTGR「Xe-100」を開発中。電気出力8万kWのHTGRを4基連結することで、出力を32万kWまで拡大できる。X-エナジー社はこのようなHTGR設計を通じて、電力や産業用の熱生産、大規模な水素製造等で脱炭素化を促進するなど、世界中で高まりつつあるクリーン・エネルギーの需要に応えられると考えている。米国内では2027年以降に初号機を建設する計画で、英国での建設はそれ以降になるとしている。

英国ではビジネス・エネルギー・産業戦略省(BEIS)が2021年12月、2030年代初頭の実証を目指して建設する先進的モジュール式原子炉(AMR)技術として、高温ガス炉(HTGR)を選択した。柔軟性の高い活用が可能な原子炉開発予算3億8,500万ポンド(約605億円)のうち、1億7,000万ポンド(約267億円)を「AMRの研究開発・実証プログラム」に投じ、HTGRの初号機を建設する考えだ。BEISはまた、今年4月に新しい「エネルギー供給保証戦略」を発表しており、この中で原子力開発における3つの方向性として、100万kW級の大型炉のほかに小型モジュール炉(SMR)、およびHTGRなどのAMR(*)を開発する方針を示している。

米英の2社による今回の共同発表によると、HTGRの開発と建設に関する両社の協力は、「これら3つの方向性すべてに貢献する」というキャベンディッシュ・ニュークリア社の方針を支えるとともに、英国のエネルギー供給保証を一層確実なものとし、2050年までに英国がCO2排出量の実質ゼロ化を達成する一助になる。両社はまた、英国の原子力サプライチェーンにも、新たなビジネスの機会が相当量創出されると強調している。

キャベンディッシュ・ニュークリア社は「世界をリードする米国の原子炉技術と、当社のプロジェクト統合能力や機器の製造・モジュール化技術、運転保守(O&M)能力などを組み合わせることで、双方の豊富な経験と幅広い専門的知見が一つにまとまり、英国でHTGRを開発・建設するための絶好の機会が生み出される」と表明した。

「Xe-100」に関連する動きとしては、米エネルギー省(DOE)は2020年10月、「先進的原子炉設計の実証プログラム(ARDP)」における7年間の支援対象企業の一つとしてX-エナジー社を選定。米国内では、ワシントン州の2つの公益電気事業者(グラント郡PUDとエナジー・ノースウエスト社)が、「Xe-100」をエナジー・ノースウエスト社保有のコロンビア原子力発電所と同じサイト内で建設することを計画している。

同設計についてはまた、カナダ原子力安全委員会(CNSC)が2020年8月から予備的設計評価(ベンダー設計審査)を実施中。建設・運転許可の取得に向けた正式な申請手続に先立ち、同設計がカナダの規制要件を満たしているか、X-エナジー社の要請に基づいて評価している。さらに、ヨルダンが2030年までに「Xe-100」を国内で4基建設することを希望しており、X-エナジー社とヨルダン原子力委員会は2019年11月、基本合意書を交わしている。

【注*】BEISは既存世代の原子力発電所の後に出現する新しい原子炉技術の説明としては、一般的に理解されている「SMR」という表現では意味が狭すぎると考えており、①水で冷却する方式の第3世代SMR:既存の原子力発電所と似たタイプの技術で出力が小さい、②新たな冷却システムや燃料を使う第4世代以降の新型モジュール式原子炉:産業プロセス熱などの新機能を提供できる――などの2グループに分類している。

(参照資料:X-エナジー社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの5月11日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)

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