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米メリーランド州、石炭火力のSMRへのリプレースを検討

16 Jun 2022

X-エナジー社の「Xe-100 」 ©X-Energy

 

 

米メリーランド州のエネルギー管理局(MEA)は6月14日、州内の石炭火力発電施設をX-エナジー社製・小型高温ガス炉「Xe-100」にリプレースする場合の、経済的実行可能性や社会的な便益を評価するため、同社およびフロストバーグ州立大学と共同調査を実施すると発表した。

同州を本拠地とするX-エナジー社との協力により、同社の先進的な小型モジュール炉(SMR)を州内で建設する実行可能性を探るとともに、クリーンエネルギー開発を推進する機会や新たな関係雇用を創出する可能性についても調査を実施。判明事項はフロストバーグ州立大が経済影響面の分析を行い、今年後半にも結果を公表することになる。

メリーランド州は東海岸北部に位置する州で、首都ワシントンDCに隣接している。同州の州議会は、今年初頭に成立させた「地球温暖化防止法」のなかでCO2排出量の本格的な削減目標を掲げており、最終的には2045年までに州経済におけるCO2排出量の実質ゼロ化を目指している。今回の調査協力にともない、MEAはX-エナジー社とフロストバーグ州立大に補助金を交付している。

MEAの発表によると、3者の協力は同州内におけるSMR立地調査の最初の一歩となる。受動的安全性を備えたペブルベッド式SMRの建設は、信頼性の高い無炭素電源が得られるなど様々なメリットがあり、広い意味では州内のエネルギー生産やビジネスにも多大な利点があるとした。既存の発電設備をSMRで置き換え、州内で増大する電力需要に応えることが出来れば、発電資産の標準的取得原価が抑えられ高サラリーの雇用も維持が可能。SMRの建設とメンテナンスで州内の製造・建設部門に新たな事業機会がもたらされるほか、州民や企業等の消費者は低コストで供給上の柔軟性が高い電力を得ることができる。 

MEAのM.B.タング局長は今回、「低炭素なエネルギーシステムへの移行を目指す当州では、エネルギーの供給情勢が急速に変化するなか、毎日24時間確実に発電可能な新しい方法を見出さねばならない」と表明。その上で、「技術の進歩の最先端に留まりつつ、脱炭素化目標の達成方法を模索する当州にとって、SMRは最も適している」と指摘しており、「今回の調査協力では、この先進的無炭素電源の建設が当州の状況に適っているか、また、良好な調査結果が出た場合は建設をどのように進めるのが最善かの判断を下せると思う」と述べた。

X-エナジー社の「Xe-100」は、第4世代の非軽水炉型・先進的SMRで、米エネルギー省(DOE)は2020年10月、同社を「先進的原子炉設計の実証プログラム(ARDP)」で支援金を交付する対象企業の1つに選定した。CO2を発生しない「Xe-100」では電気出力と熱の生産量を柔軟に変更することができ、海水脱塩や水素製造などの幅広い分野に適用可能。1つのサイトで「Xe-100」を最大12基連結することで、出力は約100万kWに達すると同社は強調している。

同設計については、西海岸ワシントン州の2つの公益電気事業者が2021年4月、X-エナジー社とパートナーシップを組むための了解覚書を締結。州内の使用電力を2045年までに100%無炭素化するため、「Xe-100」を同州で建設し商業化の可能性を実証する。世界では、ヨルダンが2030年までに「Xe-100」の4基建設を希望しており、X-エナジー社とヨルダン原子力委員会は2019年11月、基本合意書を交わしている。

X-エナジー社は現時点で、同設計を米原子力規制委員会(NRC)の設計認証(DC)審査に申請していないが、2020年8月からはカナダ原子力安全委員会(CNSC)が同設計の予備的設計評価(ベンダー設計審査)を実施中である。

(参照資料:メリーランド州政府X-エナジー社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの6月15日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)

 

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