チェコ ドコバニ発電所増設でサイト詳細調査に着手
19 Aug 2025
韓国水力・原子力(KHNP)は8月8日、チェコのドコバニ原子力発電所5-6号機(APR1000×2基)の増設に係わるサイト詳細調査の着手式を開催した。
同調査は2026年8月まで約12か月間かけて実施され、増設部分の土壌や岩盤に関する詳細な情報を取得し、設計の基礎資料として活用することが目的。最大で10台のボーリング装置と補助車両によって順次行われ、今後数か月でボーリング作業などを行い、土壌、岩石、水のサンプル採取や各種試験・測定を実施する。
着手式には、KHNPのJ. ファンCEOとドコバニII原子力発電所(EDU II。政府が80%、チェコ電力ČEZが20%所有)のP. ザボドスキー社長をはじめ、L. ブルチェック産業貿易相、現地調査の実施企業の幹部らが出席。KHNPのファンCEOは、「サイト詳細調査はドコバニ発電所増設プロジェクトの最初の現場作業であり、APR1000建設の実質的な出発点。契約工程を遵守するため、計画に従い徹底的かつ体系的に調査を実施する」と述べた。EDU IIの建設は2029年に開始され、初号機の試運転を2036年に見込んでいる。
EDU IIとKHNPは6月4日、ドコバニ発電所に2基を増設するためのエンジニアリング・調達・建設(EPC)契約を締結した。なお、EPC契約締結前の5月7日、タービンホールの包括的供給の枠組み合意やシュコダ・パワー社、KHNP、斗山エナビリティ間の蒸気タービン供給の契約を含む、合計9件の予備契約と3件の覚書が締結され、プロジェクトの準備は大きく前進していた。ブルチェック産業貿易相は、すでにプロジェクトへのチェコ企業の関与を約30%達成しているが、建設完了までに60%を目標にしており、チェコ国内に設立されたKHNPのローカライゼーションセンターも、チェコ企業と韓国プロジェクトチームを結びつける役割を果たしていると強調した。産業貿易省は、プロジェクトの完成が教育や地域経済にも好影響をもたらし、最大1,000の新たな企業創出と2,300億チェココルナ(約1.6兆円)超えの投資誘致が見込まれると試算する。
2024年7月、KHNPはドコバニとテメリン両原子力発電所における最大4基の増設プロジェクトの主契約者をめぐる優先交渉権を獲得し、EDU IIと約9か月にわたる技術的、商業的交渉を実施した。応札していた米ウェスチングハウス社と仏EDFは、入札プロセスについてチェコの競争保護局(ÚOHS)に異議申し立てを行った。WE社は後に申し立てを取り下げ、EDFは2025年4月に却下された。これにより当初3月に予定されていた最終契約締結は遅延。その後EDFはチェコ地方裁判所に提訴し、5月6日、同地方裁はEDU IIとKHNPの契約締結禁止仮処分を下した。両社はチェコ最高行政裁判所にその決定を不服として控訴。6月4日、最高行政裁判所は契約締結禁止仮処分を取り消し、両社の契約締結が可能になった。
テメリン発電所の隣接サイトで、SMR建設に向けた地質調査も実施
ČEZは南ボヘミヤ地域のテメリン原子力発電所(VVER-1000×2基、各108.6万kWe)の隣接サイトに同国初となる小型モジュール炉(SMR)の英製ロールス・ロイスSMRを設置する計画で、現在、地質調査を実施している。50〜200mの深さまで合計9本のボーリングを実施し、岩盤などを分析する。この調査結果は、ČEZが2027年中に見込む、サイト許可申請に活用するという。テメリン地域は既存の発電所の稼働前の1980年代にも十分に地質調査されており、原子力利用に適した地質であることが確認されているものの、SMR建設のための調査は今回が2回目。初回調査は3年前に行われ、4本のボーリングで深さ30mまで調査済み。さらに追加の調査も予定であるという。
ČEZは2024年9月、合計最大300万kWeの設備容量を確保するためのSMRの優先サプライヤーに、ロールス・ロイスSMR社を選定。ČEZは、ロールス・ロイスSMR社の約20%の株式を取得し、戦略的少数株主となった。ČEZとロールス・ロイスSMR社は今年7月、先行作業契約(Early Works Agreements: EWA)を締結。両社共同でテメリン発電所サイトを対象に、規制手続き、環境評価、サイト準備作業を実施する。初号機の運転開始は2030年代半ばを予定している。ロールス・ロイスSMRは既存のPWRをベースとしており、電気出力が47万kWとSMRにしては大型なのが特徴。少なくとも60年間稼働する。
ČEZ傘下にあるシュコダJS(ŠKODA JS)は8月1日、ロールス・ロイスSMR社とチェコ国内外におけるSMR用コンポーネントの開発と生産における協力に関する覚書を締結した。シュコダ社はチェコに拠点を置く、原子力発電所の建設とサービスの経験を持つヨーロッパ有数のエンジニアリングおよび製造会社の1つ。ČEZは、新たな原子力発電の開発と建設にチェコ産業界を関与させることを優先事項としている。