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チェコ ドコバニ5号機の増設で3社が応札 中露は除外

01 Dec 2022

ドコバニ原子力発電所 ©CEZ

チェコの国営電力(CEZ社)は11月30日、同国南東部のドコバニ原子力発電所で増設するⅡ期工事(5、6号機、各120万kW級PWR)の最初の1基について、100%子会社であるドコバニⅡ原子力発電会社(EDU II)が大手のベンダー3社から最初の入札文書を受領したと発表した。

5号機建設の競争入札は今年3月に開始され、EDU II社は安全・セキュリティ面の資格審査をクリアした米ウェスチングハウス(WH)社とフランス電力(EDF)、および韓国水力・原子力会社(KHNP)を正式に招聘。ロシア国営のロスアトム社と中国広核集団有限公司(CGN)も参加を希望していたが、K.ハブリーチェク副首相が大臣を兼ねる同国の産業貿易省がこれら2社を除外した。

EDU II社は今後、これらの入札文書の検討およびベンダーとの交渉を開始し、提案されている原子炉設計の技術面や商業面の妥当性を検証する。2023年9月までに最終入札文書を3社から受け取る予定で、これらの評価結果に関する報告書をチェコ政府が承認すれば、2024年にも選定ベンダーと契約を締結し、既存ユニットの隣接区域で2029年に5号機を着工、2036年の試運転開始を目指す。

CEZ社は将来的に、Ⅱ期工事の2基で既存の1~4号機(ロシア型PWR、各51万kW×4基)を代替する方針。チェコ政府はそのため、この増設計画に対して今年初頭に成立した低炭素法に基づいてEDU II社に低金利融資を提供するほか、同炉が発電する電力の売買契約も交わすとしている。

入札に参加した3社はこれまで、契約の獲得に向けて周到に準備を進めてきており、地元の関係企業と強力なチームを結成、ドコバニ発電所サイトを訪問するなどした。WH社の今回の発表によると、同社は原子炉建設のパートナー企業であるベクテル社と協力して、同社製の第3世代+(プラス)炉「AP1000」をドコバニ5号機として建設することを提案。その際、ドコバニ6号機とテメリン原子力発電所の増設計画についても、ベクテル社とともに請け負う提案をしている。

一方のEDFは、今年6月にチェコの首都プラハにEDFの原子力支部を開設。中国で完成し、また欧州で現在建設中の「欧州加圧水型炉(EPR)」より出力の小さい、120万kW級の「EPR1200」をEDU II社に提案する方針を明らかにした。またKHNP社は、アラブ首長国連邦(UAE)への輸出に成功した、韓国製の第3世代の140万kW級「改良型加圧水型炉(APR1400)」を提案したと見られている。

チェコ政府は2015年5月の「国家エネルギー戦略」のなかで、当時約30%だった原子力の発電シェアを2040年までに60%に引き上げると明記。同戦略をフォローする「原子力発電に関する国家アクション計画」に基づいてドコバニ発電所の2基増設計画を進めている。同国の環境省は2019年9月にⅡ期工事建設計画の包括的環境影響評価(EIA)に好意的判断を下しており、EDU II社はこれを受けて、2020年3月に同計画の立地許可を原子力安全庁(SUJB)に申請、SUJBは2021年3月にこの許可を発給した。

CEZ社は原子力発電の最大の強みとして、エネルギー・セキュリティの高さを挙げているほか、運転コストの低さや長期的な電力価格の安定性を指摘した。同社はまた、チェコの市場調査会社である「国際ビジネス研究サービス(IBRS)」が10月末から11月初旬にかけて実施した調査の結果に言及。同国では過去一年で原子力に対する国民の支持率が7%上昇し、1993年以降の最高値である72%に到達したが、この上昇は主に最近のエネルギー危機が原因だと指摘している。

(参照資料:CEZ社WH社EDFの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの11月30日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)

 

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