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チェコ テメリン発電所でSMR初号機建設の地質調査を実施

06 Dec 2022

地質調査に使われる振動発生機 ©CEZ

チェコの国営電力(CEZ社)は12月2日、既存のテメリン原子力発電所で計画している同国初の小型モジュール炉(SMR)の建設準備作業として、初期の地質調査を完了したと発表した。

建設サイトは正確には、テメリン発電所(ロシア型PWR×2基、各108.6万kW)の敷地南西部の外端に位置しており、複数の専門家が地盤のタイプや健全性を見極めるため、その状態を詳細に調査中。特別な振動発生機を使って地震波の到達速度や電気抵抗値などを計測するほか、深さ30mの調査抗も掘削して初期の調査結果を検証、地盤底土の組成なども分析する。

CEZ社は現在、2015年5月の「国家エネルギー戦略」とこれをフォローする「原子力発電に関する国家アクション計画」に基づいて、既存のドコバニ原子力発電所(ロシア型PWR×4基、各51万kW)で大型原子炉の増設計画を推進中。ドコバニⅡ原子力発電会社(EDU Ⅱ社)は今年3月、最初の増設1基(120万kW級)についてベンダーの競争入札を開始しており、11月30日には招聘した3社から最初の入札文書を受領している。

CEZ社は大型炉とSMRの建設計画を並行して進めている。テメリン発電所におけるSMRの初号機建設は、他の場所でSMRを建設する際のモデルケースとなる予定で、国内の老朽化した火力発電所をSMRでリプレースとすると強調している。

CEZ社は、テメリン発電所が立地する南ボヘミア州の「原子力パーク」プロジェクトとしてSMR建設を推進しており、同社と傘下の国立原子力研究機関(UJV Rez)、および南ボヘミア州政府は今年5月、共同で同プロジェクトを始動すると表明。これら3者は、プロジェクトの準備作業を調整する「南ボヘミア原子力パーク会社」の株主となり、SMR分野の研究開発と建設準備を実施している。

採用するSMRについて、CEZ社はこれまでに米国のニュースケール・パワー社、GE日立・ニュクリアエナジー(GEH)社、ホルテック社のほか、英国のロールス・ロイス社、フランス電力(EDF)、韓国水力・原子力会社(KHNP)とSMR関係の協力覚書を交わした事実に言及。米ウェスチングハウス社とは、同プロジェクトについて集中的な協議を実施中であることを明らかにしている。

CEZ社のT.プレスカッチ理事は、「(地質調査を実施中の地点が)SMR建設に最適だとの確信はあるが、建設前に地盤の状態やその他の影響ファクターを正確に把握しておかねばならない」と表明した。南ボヘミア州のM.クバ知事は、SMRについて「単にクリーンで安全な電力や熱を生産できるだけでなく、欧州の将来的なエネルギーミックスを支えることは確かだ」と指摘。SMRに加えて、人材の訓練センターも設置する機会にしたいと抱負を述べた。

(参照資料:CEZ社の発表資料(チェコ語)、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの12月5日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)

 

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