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フィンランド  IAEAが深地層処分場をレビュー

16 Dec 2022

最終的に処分場の一部となる地下研究調査施設「ONKALO」を視察したレビュー・チーム
©David George Bennett/IAEA

国際原子力機関(IAEA)は11月27日から12月8日にかけて、フィンランドで建設中の世界初となる使用済燃料の深地層最終処分場に「アルテミス(=ARTEMIS: 放射性廃棄物・使用済燃料管理、廃炉、除染に関する総合レビューサービス)」ミッションを派遣。12月9日にレビュー結果を取りまとめ、同国の取り組みを高く評価した。

同処分場の建設工事は、原子力発電事業者のティオリスーデン・ボイマ社(TVO)とフォータム社の共同出資企業であるポシバ社が、2016年末からユーラヨキ自治体のオルキルオトで進めており、現時点で2025年頃に操業開始できる見通し。同社はすでに2021年12月末、同処分場を2024年3月から2070年末まで操業するための許可を政府に申請済みである。

IAEAはフィンランド政府の要請に基づいて、加盟各国の専門家から成るアルテミス・チームを同処分場に送り、12日間にわたって建設工事や操業の準備状況などを審査。同チームはまた、フィンランドで原子力発電問題を管轄する雇用経済省、社会福祉保健省、放射線・原子力安全庁(STUK)の幹部らと会談したほか、TVOやフォータム社傘下の熱電供給企業、ポシバ社、フィンランドVTT技術研究センター、ヘルシンキ大学の関係者とも会合を持った。

アルテミス・チームは審査に際し、地球温暖化の防止目標達成に向けたフィンランドの国家戦略の中に、後の世代や環境を守れる方法で放射性廃棄物を安全に管理することが含まれている点に注目。今回のミッションに参加した米原子力規制委員会(NRC)のJ.タッパート・チームリーダーは、「使用済燃料の深地層処分場建設計画も含め、フィンランドは国家戦略を効率的に実行している」と評価した。その上で、「IAEAの安全基準や技術的ガイダンスに基づいて、国際的な専門家が独立の立場で評価と助言を行うこのピア・レビューを通じて、我々はフィンランドが約束した安全で効率的な放射性廃棄物管理プログラムの実行状況をタイムリーに確認できた」と述べた。

また、フィンランド政府が今後も責任を持って、使用済燃料その他の放射性廃棄物の安全な管理政策を推進していけるよう、同チームは以下の点を勧告している。

  • フィンランド政府が放射性廃棄物に関する現行の複雑な管理・規制を簡素化する際、法制面の矛盾が生じないよう改善する。
  • フィンランド政府は、放射性廃棄物に関する現行の政策や戦略が同国の将来の地球温暖化対策やエネルギー戦略に対しても適切なものになるよう、引き続き評価を行っていく。
  • フィンランド政府は、放射性廃棄物の管理に関する国家プログラムの管理・運営に際し、必要となる財源の評価を随時実施する。

雇用経済省でエネルギー問題を担当するL.ヘイキンヘイモ次官は、今回のIAEAミッションについて、「提示してくれた勧告や将来のための貴重な示唆により、我々の放射性廃棄物管理政策は一層進め易くなる」と指摘。「ポシバ社の深地層最終処分場に世界初の操業許可を与える際は、特に重要になる」と強調した。

同ミッションの最終報告書は、約2か月後にフィンランド政府に提出される予定である。

(参照資料:IAEAの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの12月13日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)

 

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