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ルーマニア政府 チェルナボーダ3、4号機の完成に向け支援提供へ

23 Dec 2022

ルーマニアで唯一のチェルナボーダ原子力発電所 ©SNN

ルーマニアのエネルギー省は12月19日、チェルナボーダ原子力発電所で建設工事が中断している3、4号機(各カナダ型加圧重水炉:CANDU炉、70万kW)の完成に向けて、財政面等の支援策を国営原子力発電会社(SNN)に提供する法案を政府が承認したと発表した。

同法案は、政府とSNNの間で「支援協定」を締結するためのもので、議会へ提出済みである。財政面の支援については、エネ省は差金決済取引(CfD)や欧州連合(EU)基金の適用などを検討している。

総工費が約70億ユーロ(約9,850億円)という両炉の完成プロジェクトで、ルーマニアは3号機の運転を2030年末に、4号機は翌2031年に開始するとしており、これらの原子炉を通じて、同国はエネルギーの供給保証強化や自給率の向上を図る方針。EUが地球温暖化防止で掲げた、「2030年までにCO2排出量を1990年比で少なくとも55%削減する」という目標の達成にもつながると強調した。

同国はまた、現在稼働中のチェルナボーダ1、2号機(各CANDU炉、70万kW級)で総発電量の約20%を賄っているが、3、4号機が完成すればこの数字は倍近くの36%に上昇するとエネ省は指摘。原子力部門では新たな雇用が創出され、国内サプライチェーンが活性化される。融資等も受け易くなることから、立地地域の経済効果も大きいと指摘している。

チェルナボーダ3、4号機は1980年代半ばに本格着工したが、1989年のチャウシェスク政権崩壊により、進捗率がそれぞれ15%と14%のまま建設工事が停止した。これらを完成させるという政府決定を受け、SNNは2009年にプロジェクト企業を設立したものの、同社への出資を約束していた欧州企業6社は経済不況等によりすべて撤退した。2015年には、中国広核集団有限公司(CGN)がこの計画に協力するためSNN社と覚書を交わしたが、その後に米国とルーマニアの協力関係が進展したことから、CGNとの協力は打ち切られている。

米国とルーマニアの両政府は2020年10月、両炉の完成プロジェクトも含め、ルーマニアの民生用原子力発電部門の能力拡充と近代化に米国が協力するため、政府間協定(IGA)を締結。この協定に基づき、米輸出入銀行(US EXIM)は今年11月、同プロジェクトに準備作業等を提供する契約について、最大30億5,000万ドルの融資を提案するとルーマニア側に伝えている。

今回の法案でルーマニア政府は、政府保証も含めた複数の財政支援策を財務省が取ると表明。担当省であるエネ省もCfDの実施を進めていくほか、EUが東欧の加盟10か国に提供している「近代化基金」[1] … Continue readingを3、4号機の建設と運転に適用する対策を進める。また、輸送・インフラ省を通じて、政府は4基分の冷却水をドナウ川から確保するための措置を講じる。さらに、政府が約6割出資している送電システム事業者のトランスエレクトリカ社に指示を出し、3、4号機の起動日までに国内送電網への接続準備を整えるとしている。

SNNが3段階で進めている両炉の完成プロジェクトは現在、約24か月間をかけた第一段階にあり、傘下のエネルゴニュークリア(EN)社がプロジェクト企業として事業を展開していけるか、資産や収益などの現在価値を算出する業務や、EPC(設計・調達・建設)契約の締結に向けた準備作業を実施中。第二段階では、18~24か月の間に機器サプライヤー関係の市場分析やエンジニアリング作業を実施し、プロジェクトの実行可能性を再評価する。「最終投資判断」を下した後は、69~78か月の第三段階に入り、実際の建設工事や原子炉の起動を行うことになる。

(参照資料:ルーマニア政府の発表資料(ルーマニア語)、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの12月21日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)

脚注

脚注
1

EUの対象10か国がエネルギー関係の温室効果ガス排出削減目標を達成できるよう、ECと欧州投資銀行が協力して、エネルギーシステムの近代化や効率性の改善支援を行うための基金

cooperation