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韓国の2企業 クリーン水素の製造でUSNCのマイクロ原子炉活用へ

24 Apr 2023

3社による覚書の調印式  ©Ultra Safe Nuclear Corporation

韓国の現代エンジニアリング社とSKエコプラント社は420日、モジュール式マイクロ原子炉(MMR)を用いたクリーン水素の製造ハブ建設に向けて、米国のMMR開発企業ウルトラ・セーフ・ニュークリア社(USNC)を交えた3社で研究開発を行うための協力覚書を締結した。

現代社とSK社による「マイクロ原子炉の水素製造ハブ(Hydrogen Micro Hub)」は、MMRが生産する電力と高温の蒸気を固体酸化物形電解セル(SOEC)プロセスと組み合わせ、水の電気分解によりピンク水素[1] … Continue readingを製造する施設。

3社は、SKグループの建設子会社であるSKエコプラント社の本部が置かれているソウル特別市内の「鐘路区」で同ハブの建設を目指しており、今回の合意の下、5年計画でMMRSOEC統合プラントの商業化を目指した研究開発を共同で実施。価格面の競争力を持った水素製造システムの設置に向けた研究を行うとともに、将来的に水素の製造・供給事業を確立できるよう検証していく。

3社の役割分担として、現代エンジニアリング社がMMRBOP(主機以外の周辺機器)開発とEPC(設計・調達・建設)業務を担う一方、USNC社はMMRの設計と製造、および供給に責任を持つ。SKエコプラント社は、固体酸化物型燃料電池を製造・販売している米ブルーム・エナジー社のSOEC施設を使って、原子力による水素製造システムを確立するほか、関係機器も調達する。

4世代の原子炉であるUSNC社のMMRは、電気出力0.5~1万kWで熱出力は1.5kW。シリコン・カーバイドで層状に被覆されたウラン粒子を燃料に用いる、小型のモジュール式HTGRである。同炉については、同社とカナダのオンタリオ・パワー・ジェネレーション社の合弁事業体であるグローバル・ファースト・パワー(GFP)社が20193月、カナダ原子力研究所(CNL)のチョークリバー・サイトでの初号機建設を念頭に、同国の原子力安全委員会(CNSC)に「サイト準備許可(LTPS)」を申請した。

現代エンジニアリング社とUSNC社は、今回の研究開発にこのMMRを活用していく方針。商業用PWRとの比較でMMRは一層高温の蒸気を生産できるため、USNC社はこの高温を活用すれば、少ないエネルギーで水素の製造効率を最大に拡大できるとしている。

SKプラント社は、同社とブルーム・エナジー社の合弁事業体であるブルームSK燃料電池社が慶尚北道の亀尾市に設置した130kW規模のSOEC施設を、今回の研究開発に利用する計画である。同施設を使った水素の製造試験はすでに成功しており、韓国政府が主導するグリーン水素[2] … Continue readingの製造実証プロジェクトにも参加する予定。同社はグリーン水素からアンモニアやメタノールを製造するプロジェクトも推進中であるため、これに「マイクロ原子炉の水素製造ハブ」によるピンク水素を加えることで、無炭素な水素の製造モデルを多様化していく考えである。

現代エンジニアリング社のホン・ヒョンソンCEOは今回の3社合意について、「環境に優しく経済的な水素の製造・供給事業を目指しており、これ以外にも当社はプラスチック廃棄物のリサイクルや太陽光、洋上風力などの事業も進めている」と説明。これらを通じて、世界規模のエコ・エネルギー企業として躍進していきたいと述べた。

(参照資料:SKエコプラント社(韓国語)USNC社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNA421日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)

 

脚注

脚注
1 「パープル水素」あるいは「イエロー水素」とも呼称され、原子力発電の電力で水を電気分解して製造された水素を指す。製造工程でCO2を排出しない。
2 太陽光発電や風力・水力など、再生可能エネルギーの電力で水を電気分解して得られた水素のこと。一方、化石燃料等のCO2を排出する方法で生成された水素ガスは「グレー水素」などと呼称される。

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