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フラマトム社 スロバキアのロシア製原子炉向け代替燃料供給で覚書

02 Jun 2023

SE社とフラマトム社の覚書調印 ©Framatome

スロバキア政府が34%出資するスロバキア電力(SE社)は531日、国内で稼働中の4基のロシア型PWRVVER)向け燃料供給を確保するため、仏フラマトム社と了解覚書を締結した。

フラマトム社はスロバキアの首都ブラチスラバに支店を置くなど、同国で100名以上の従業員を抱えており、SE社が運転するモホフチェ原子力発電所(出力50kWVVER-440×2基)とボフニチェ原子力発電所(同VVER-440×2基)に運転管理・保守点検(O&M)等のサービスを提供。また、建設中のモホフチェ34号機(各47.1kWVVER-440)には、安全関係の計装制御(I&C)系を納入している。

このような協力に基づき、今回の覚書ではフラマトム社側から引き続きO&MサービスやI&C系を提供するほか、新たな項目として原子燃料やサイバーセキュリティ対策の提供、スロバキア国内で医療用やその他の用途の放射性同位体の生産施設を建設する実行可能性の調査、といった項目を明記。両社が原子力分野でさらに連携していくための協議を行い、将来的な戦略の基盤を築く考えだ。

今回の両社の覚書調印は、フランスのE.マクロン大統領がスロバキアを訪問し、同国のZ.チャプトバ大統領と会談した際にブラチスラバで行われた。

SE社のB.ストリーチェク会長兼CEOは、「原子力発電所は(スロバキアの総発電量の5割以上を発電するなど)国家的なエネルギー供給の要であり、燃料調達先の多様化は2つの原子力発電所を安定的に運転するための重要タスクだ」と指摘した。

フラマトム社はこの協力を通じて、スロバキアの国内VVERの燃料調達先多様化と、エネルギー供給の確保に貢献すると表明。同社が誇る原子力関係の知見や技術・サービスのなかでも、原子燃料は特にスロバキアへの貢献度が高いと強調した。

フラマトム社の発表によると、近年の国際情勢の中で、同社はSE社も含め欧州でVVERを運転するすべての電気事業者から欧州独自の原子燃料を開発するよう要請された。それらの原子力発電所で燃料途絶による運転停止が無いよう、また(ロシアが提供する)燃料への輸入依存を軽減するためにも、同社は欧州が主体的に運営できる燃料供給体制を築いていく方針である。このため、欧州では当面の目標としてVVER専用の燃料製造工場とそのサプライチェーンを整備していくとした。また、これと並行して中期的には、欧州域内のVVER運転事業者から協力を得ながら、欧州独自の設計と製造によるVVER燃料と関連機器を開発するとしている。

欧州では現在、チェコとブルガリアで合計4基の100kWVVERVVER-1000)、フィンランド、チェコ、スロバキア、ハンガリーで合計14基のVVER-440が稼働中。ブルガリアではコズロドイ原子力発電会社が昨年12月、コズロドイ5号機(VVER-1000)に装荷してきたロシア製燃料を、米ウェスチングハウス(WH)社製燃料に切り替えると決定、同社と10年間の燃料供給契約を締結した。また、コズロドイ原子力発電会社は同月の末、6号機(VVER-1000)用の燃料を2034年まで確保するため、フラマトム社と同様の契約締結に向けた交渉を開始すると発表している。

(参照資料:SEフラマトム社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNA61日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)

 

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