原子力産業新聞

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米廃炉会社 ユタ州にSMR導入を検討

02 May 2025

桜井久子

IPP発電所サイトで建設中のガス火力発電所 Ⓒ IPA

米ユタ州を拠点とするエナジー・ソリューションズ社は423日、同州の電力会社Intermountain Power AgencyIPA)およびユタ州との間で、IPAがユタ州デルタ近郊に所有する石炭火力発電サイトで、SMRの建設を検討するための了解覚書に署名したことを明らかにした

エナジー・ソリューションズ社は、原子力施設の廃止措置、使用済み燃料の管理、核物質の輸送など、幅広い原子力サービスを手掛けている。ユタ州エネルギー開発局によると、新規原子力発電の建設は、S. コックス知事の「Operation Gigawatt」イニシアチブの下、社会の電化、エネルギー集約産業による電力需要の増大に応えるという同州の目標に沿ったものだという。

IPA
30年以上にわたり、地域にエネルギーを供給してきた石炭火力発電(Intermountain Power ProjectIPP)を閉鎖し、IPP Renewedと称するプロジェクトの下で、再生可能エネルギー源から電気分解により生成された水素を燃焼させる84kWeのガス火力発電所の建設を進めている。稼働開始時の燃料の30%に水素を用い、2045年までに100%水素に移行。発電所の地下深くの塩ドームに地下貯蔵設備を建設し、水素を貯蔵するという。

エナジー・ソリューションズ社のK. ロバックCEOは、「再生可能エネルギーと水素利用の取組みに加え、新たに先進的な原子力技術を導入し、ユタ州と地域のニーズを満たす安定した脱炭素電力の供給を目指していく」とコメントした。

IPA
とユタ州との覚書では、IPPサイトに建設される具体的な原子炉技術は特定されていないが、エナジー・ソリューションズ社は、IPAとユタ州による米原子力規制委員会の許認可手続きプロセスを支援していくとしている。エナジー・ソリューションズ社は、原子力開発プロジェクトの主要な特徴として以下を掲げる。

  • IPAとの提携による、IPPサイトの既存インフラの活用
  • 先進的なSMR導入によるベースロード電源の開発
  • 既存の地域エネルギーハブおよび先進的な送電網安定化技術との相乗効果
  • 地元、州、地域の利害関係者との協力
  • ユタ州の農村経済の開発と雇用創出

今回の発表に先立ち、エナジー・ソリューションズ社は202412月にカナダのテレストリアル・エナジー社と協力覚書を締結している。両社は、エナジー・ソリューションズ社が廃炉プロセスで取得した旧原子力発電所サイトにおいて、テレストリアル社が開発するSMRである一体型熔融塩炉(IMSR)の設置と展開の検討で協力することになっている。エナジー・ソリューションズ社は、ウィスコンシン州キウォーニ原子力発電所のほか、ネブラスカ州フォートカルホーン発電所、カリフォルニア州サンオノフレ発電所、ペンシルバニア州スリーマイル・アイランド発電所(2号機)、ウィスコンシン州ラクロス発電所の廃止措置を実施している。

 

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