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加オンタリオ州 北米初の商業用SMR建設を承認

21 May 2025

桜井久子

DNNPサイト  Ⓒ OPG

オンタリオ州政府は58日、州営電力であるオンタリオ・パワー・ジェネレーション(OPG)社のダーリントン新原子力プロジェクト(DNNP)の建設予定地に建設を計画する、GE日立・ニュクリアエナジー(GEH)社製SMRBWRX-300」(BWR30kWe)の4基のうち、初号機の建設計画を承認した。同州での30年以上ぶりの新規建設プロジェクト、北米初の商業用SMRプロジェクトとなる。

オンタリオ州のS. レッチェ・エネルギー・電化相は、「今日はカナダにとって歴史的な日。建設プロジェクトはカナダで18,000人の雇用を創出。カナダ製の鉄鋼、コンクリート、材料を用いて、オンタリオ州の経済成長の野心的な目標を実現するために必要な、信頼性の高いクリーンな電力を提供していく」と述べた。州の電力需要が2050年までに少なくとも75%急増すると見込まれる中、州政府は、BWRX-300×4基の完成により120万世帯へ電力を供給し、2030年代初頭に発生する恐れのある電力不足を解消する考えだ。

OPG社のN. ブッチャーCEOは、「当社はSMRのパイオニアとして、カナダのエネルギー安全保障を強化しつつ、国内産業をさらに成長させるための能力と専門知識を世界に示していく。オンタリオ州の強固な原子力サプライチェーンと、原子力プロジェクト、特にダーリントン改修での実績により、SMRをスケジュール通り、予算内で完成させる」と強調した。OPG社は今年4月初めにカナダ原子力安全委員会(CNSC)から初号機の建設許可を取得しており、2030年末までに稼働を予定。運転開始前には認可を取得しなければならない。

原子炉は小型であるが、DNNPの経済的影響は甚大になる予想されている。主要な非営利の独立系研究機関であるカナダ産業審議会によると、4基のBWRX-300の設置、運転、保守により、カナダのGDP65年間で385億加ドル(約4兆円)の増加。OPG社は4基を65年間の運転させることで年平均約3,700人の雇用維持に貢献するという。これには建設中の年間18,000人の雇用が含まれている。プロジェクト費用の約80%はオンタリオ州内の80社以上の企業に向けられ、年5億加ドル(約518億円)が州内のサプライチェーンに投入されるという。

オンタリオ州の系統運用者(IESO)は、他の脱炭素電源と比較して、DNNPがコストとリスクの点で最良の選択肢であると結論付けている。IESOによると、4基のSMRがなければ最大890kWeの風力と太陽光発電をエネルギー貯蔵と組み合わせて構築する必要があり、この代替アプローチには大幅な土地要件や大規模な送電網の構築の必要性など、重大なリスクを伴うと説明。これに加え、ダーリントン発電所(CANDU炉×4基、各93.4万kWe改修プロジェクトにおけるOPG社の優れた実績が、DNNPを支援するという州政府の決定に寄与し、州政府はDNNPに対し、209億加ドル(約2.2兆円)の支援を明らかにした。これには、サイト準備、エンジニアリング、設計作業、およびSMR4基の建設のコストが含まれている。なお、最初のSMR初号機の建設コストは61億加ドル(約6,315億円)で、加えて4基に共通するシステムとサービスコストが16億加ドル(約1,656億円)。但し、コストはダーリントン改修プロジェクトと同様、効率の向上とともに後続機ごとに減少すると予想されている。

OPG社によると、2022年秋に初期のサイト準備作業が開始され、整地作業のほか、防火管、給水管、衛生下水道管、ネットワークケーブルなどの設備を設置した。サイトでは製造棟を含むいくつかの重要な建物の建設が開始され、原子炉建屋のシャフトの掘削作業が継続されている。また、長さ30m以上、直径6m以上、重さ550 tの原子炉圧力容器(BWXテクノロジーズ社が製造)や、2027年夏までにサイトに到着予定の発電機ローターなど、長納期部品を確保している。

ダーリントンサイトには、1990年~1993年にかけて営業運転を開始したCANDU炉(93.4kWe)×4基がある。OPG社は、2026年までの完了を予定し、順調に進んでいるダーリントンの改修プロジェクトから学んだ7,000以上のノウハウを生かし、SMR建設プロジェクトをスケジュール通りに進める考えだ。

GEGeneral Electric)のエネルギー事業を担うGEベルノバ社電力部門のM. ジンゴーニCEOは、「BWRX-300初号機の導入により、オンタリオ州はSMR分野で世界をリードする。OPG社とプロジェクトパートナーとの取組みは、世界の原子力産業のベンチマークとなる」と指摘。GEベルノバ日立SMR カナダ社のL. マクブライド・カントリーリーダーは、「世界がSMRの採用に注目する中、当社はOPG社、アトキンス・リアリス(AtkinsRéalis)社、エーコン(Aecon)社と共同でBWRX-300の初号機の建設に着手できることを誇りに思う。オンタリオ州のサプライチェーンは、このプロジェクトへの大きな貢献が期待されており、すでに州内の企業に国際的な輸出の機会が生まれている。クリーンエネルギー技術におけるオンタリオ州の世界的なリーダーシップを強化し、次世代の原子力イノベーションの世界的なハブとして位置付けるものだ」と述べた。

なお同日8日、カナダ建設大手のエーコン社とKiewit Nuclear Canada社合弁のAecon Kiewit Nuclear Partners社(エーコン社が主導)は、DNNPの実行段階の管理、建設計画、実施を範囲とする提携契約をOPG社と締結した。エーコン社分の契約額は約13億加ドル(約1,967億円)。エーコン社は、ダーリントンとピッカリング発電所の改修、ブルース発電所の主要部品交換プログラムなど、オンタリオ州の3大原子力改修プロジェクトの主要な建設業者でもある

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