TVAがBWRX-300の建設許可を申請 米国初
22 May 2025
米テネシー峡谷開発公社(TVA)は5月20日、米原子力規制委員会(NRC)に、テネシー州オークリッジ近郊の同社クリンチリバー・サイトでの、小型モジュール炉(SMR)の建設許可を申請(CPA)した。GE日立・ニュクリアエナジー(GEH)社製のBWRX-300(BWR、30万kWe)を採用している。
今回のBWRX-300のCPAは米国初となる。北米ではカナダのオンタリオ・パワー・ジェネレーション(OPG)社によるカナダ原子力安全委員会(CNSC)へのCPAに続き、2番目(OPG社は建設許可をすでに取得済み)。TVAは同サイトにBWRX-300×1基を建設し、人工知能(AI)、量子コンピューティングなどに特化した電力供給を狙っている。
TVAのD. モールCEOは、「今回のCPAは、TVA、テネシー州、米国にとって重要なマイルストーン。当社はBWRX-300初号機の導入に向けた作業を実施、SMR導入に伴うリスクを軽減し、同炉型の建設を選択する他の電力会社のために道筋を作る。新型炉の導入は、今後数十年にわたって米国の家庭や企業に手頃な価格で安定した電力を供給するために不可欠」と述べた。
TVAはBWRX-300の安全性、シリーズ建設の容易性、効率性を利点に掲げる。また、設置面積が小さいために迅速に建設でき、かつコンパクトなサイズのため、操作が簡単で、景観によくフィットすると指摘している。
TVAはクリンチリバー・サイトについて2019年12月、米原子力規制委員会(NRC)より、SMR建設用地として事前サイト許可(ESP)を取得済み。TVAは合計電気出力が80万kWを超えない2基以上のSMRを同サイトで建設することを想定し、2016年5月にNRCにESPを申請していた。またTVAは、GEH社のBWRX-300がSMRの中でも最も実現性が高いと判断。2022年8月にGEH社とクリンチリバー・サイトでBWRX-300を建設するための計画策定と予備的許認可で協力する契約を締結した。さらに2023年3月、BWRX-300の建設を計画するカナダのOPG社、ポーランドのシントス・グリーン・エナジー社とともに、GEH社が世界中で同炉の建設プロジェクトを円滑に進められるよう、BWRX-300の標準設計を開発することで合意、GEH社と3事業者間で技術協力契約を締結している。
またTVAは今年1月、ベクテル社、BWXテクノロジーズ社、デューク・エナジー社、電力研究所(EPRI)、GEH社、アメリカン・エレクトリック・パワー社(AEP)傘下のインディアナ・ミシガン・パワー社、サージェント&ランディ社などの公益事業会社とサプライチェーンパートナーとの連合を結成、米エネルギー省(DOE)の第3世代+(プラス)小型モジュール炉プログラムから8億ドルの助成金の申請を主導している。同プログラムは、米国内の原子力産業を強化し、米国初のSMR導入への支援、先進原子力技術のサプライチェーンの確立を目的に創設されたもの。この申請とは別にTVAは4月初め、DOEによるNRCとのライセンス活動の支援プログラムに800万ドルの助成の申請も行っている。
TVAはCPAに先立ち、クリンチリバー・サイトの環境報告書を4月末にNRCに提出。初期のサイト準備は早ければ2026年にも開始。2028年には着工、2032年末には営業運転を開始したい考えだ。
今年1月、GEH社はデューク・エナジー社とBWRX-300の標準設計ならびに許認可の推進に向けた活動に投資する契約を締結。AEP社傘下のインディアナ・ミシガン・パワー社もインディアナ州スペンサー郡で運転するロックポート石炭火力発電所サイト内に、TVA主導のDOE助成プログラムを活用してBWRX-300を建設する計画を表明している。